フリーエリア2


「ジャルジェ夫人。私はアンドレ様と別れる気はありませんわ。私はアンドレ様のことずっと前から好きだったのです。やっと想いが届いたのです。別れる気はありません!」
きっぱりと断言する薫。でも,心の中では焦っている。アンドレの記憶が戻ってきているから…。
なんとしてでもアンドレをオスカルのもとへは返さない。いいえ,返したくない!
………………………………………オスカル…フランソワ…ド…ジャルジェ…?オスカル…?聞いたことのある名前。でも,顔が思い出せない。どんな人?性別は?髪の色は?
だめだ…!思い出せない。会えばわかるだろうか?
「おばあちゃん。あのさ,オスカルという人に会わせて欲しいんだけど。会えば何か思い出せそうなんだ。」
「わかったわ。オスカルお嬢様もお喜びになるわ。ずっとお部屋に閉じこもっていらっしゃったそうですから。なによりのお薬になりますね。」
部屋に閉じこもったまま…?そのオスカルという人は俺のことを心配していたのか?顔は思い出せないけど,なんだか悪いような気がする。でも,会いたい。
………………………………………ばあやから病院へくるようにと言われた。アンドレに何かあったのだろうか?でも,アンドレが会いたいと言っているらしい。
今日のオスカルはアンドレとの初デートの時に着た白の綿パン,淡い水色に白フリルのブラウスに白いベストという出で立ち。胸元にはアクアマリンのペンダントが煌めいている。
思い出してくれるのだろうか?そこが不安だ。

「アンドレ…?どうかしたのか?アンドレ?」
アンドレのそばに座って手を握る。温かい手…。思わず涙ぐむオスカル。
「オスカル…?君がオスカルなのか?前にセーラー服姿で来たあの子?…あれ?…俺と同じ指に同じ指輪…?」
アンドレの指が私の左手の薬指に触れる。
「そうだよ。私とあなたは婚約しているんだよ。1回だけ,添い寝もした。…そして…」
私はアンドレの右頬に手を添えてキスをする。お願い…!思い出して…!胸が痛い。アンドレが思い出してくれなかったら…どうしよう…!
そのとき…,
「俺は…どうしてここにいるんだ?えっと…そうだ。何者かに階段から突き落とされて…。オスカル…?どうした?そんなに赤くなって…?ん?」
オスカルの白い頬を撫で,ブロンドの髪を撫でる。
「アンドレ…!記憶が戻ったのか!?戻ったんだな!?良かった…!
アンドレ…!」
意志の戻った黒曜石の瞳。もうあの時のガラス玉ではない。
私の知っているアンドレだ…!良かった…!
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