フリーエリア2


「あれから一年だな。」
『何から?』
「何もこわいことなんて無かっただろ?」
『ああ。そうだな。何しろお前が相手だものな。』
「と、言うと?」
『お前が私に恐怖や苦痛を与える筈がない、ということだ。時折、鬱陶しい小言を言って辟易させることはあってもな。』
「鬱陶しいとは酷いな。お嬢様を更生させたいだけなのに。…なあ、お前のここ、少し大きくなったんじゃないか?」
『そうか…?全然変わらん気がするが…。』
「いや、前はこう…もいだばかりの林檎のようだったが、今はもっと柔らかく、熟した感じだ。それに、ほら…。この先端も。前より敏感になっている。」
『あぁ…、それは私も感じている…。』
「全体的に前よりも少し豊満になっているよ。」
『豊満?!そういえばお前の【豊満好き】は有名だった!!』
「は?誰からそんな事を聞いた?」
『隊の連中に決まっているだろう。お前のご指名はいつも【黒髪の豊満】な女性だそうだな?』
「あいつら、そんな事まで言ったのか。」
『悪かったな?私は【金髪の痩せ】で。』
「妬くなよ。」
『妬く?私は嫉妬などしない。』
「してるじゃないか。俺はお前への届かない想いを封印したかったの!そういう仕事に就いている女性を軽んじたりするつもりはないが、肉の欲を満たすのにお前の面影を彷彿とさせるような女性(ひと)は選べなかった。」
『どうだかな。男はその手の言い訳が上手いらしいから。』
「それも隊の奴らから吹き込まれたのか?」
『だったらどうだと言うのだ?』
「あのねえ、お前は夫の俺よりも隊の奴らの言う事を真に受けるわけ?」
『そうだ。第三者の言う事は時として的確だぞ?』
「わかった。もう何も言わないよ。」
『……なんて、嘘だ。』
「嘘?」
『私がお前よりも隊の連中の言う事を信用していると、本気で思ったのか?何年私と一緒にいる?』
「お前……、相変わらず底意地が悪いな。」
『いつまで経っても学習しないお前が悪い。』
「はいはい。仰せの通りでございます。確かにワタクシには進歩が御座いません。」
『嫌味な言い方だ。』
「さあ、もう休めよ。こんなに宵っ張りの母様じゃ、この中にいる俺たちの宝物が可哀想だ。お前が眠るまで手を繋いでいてあげるから。昔みたいに…。」
               終
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