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「まもなく一年になりますね。」
『なにが?』
「貴女の花婿探しの舞踏会。」
『ああ。思い出したくもない。』
「何故です?貴女があの舞踏会をぶち壊したお陰で私たちはこうしていられる。」
『お前、あの時も同じような事を言っていたな。うちの薔薇園で。これで花婿候補は自分一人になるとか何とか。』
「負け惜しみで言ったのではありませんよ。実際、その通りになったでしょう?」
『大した自信だ。』
「自信がなければ、お父上に求婚のお願いなどいたしません。」
『求婚者というから、どんな度胸のある男かと思ったが、元部下とは…。近衛にいた頃はお前に想われていることなど、知る由もなかった。』
「私も知りませんでしたよ。貴女の肌からはあの夜の薔薇と同じ香りがする…。尤も、味は随分と違いますがね。貴女はふわふわと甘い。そう、まるで砂糖菓子のようにね。」
『相変わらず気障だな。』
「それに、貴女がなかなかのロマンチストだということも知りませんでした。」
『ロマンチスト?』
「挙式の日取りを私の誕生日にしようと仰ったのは貴女です。」
『そうすれば忘れないだろう?』
「誕生日を?それとも結婚記念日をですか?」
『両方だ。』
「ふふふ。少し、お休みになられては如何ですか?夜明けまではまだ間があります。」
『お前が眠らせてくれないのではないか。』
「確かにそうですね。でも今日はドレスが仕上がる日でしょう?例え試着でも、お顔がくすんだりしてはいけません。」
『ドレスは式までは見せないぞ?』
「承知しておりますよ。楽しみは大切にとっておきます。我が花嫁。」
終
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