フリーエリア2
扉の取っ手に触れようとして、俺の手を突き刺す細い光の筋に気付いた。
その筋を辿って、小さな穴に焦点を合わせる。
下弦の月の頼りない光に浮かぶ白い背中。
昔、彼女は天使だった。
背には小さな羽根があって、俺の周りをパタパタと飛んでは、進むべき道へ導いてくれた。
今は羽根の名残の骨しか見えない。
俺を愛した代償に消えてしまったのか。
否。きっと彼女の背には今でも
羽根があるのだろう。
主人でもある彼女の寝所を
覗くような邪な男には
見えない羽根が。
左目は彼女に捧げた。
残った右目も差し出したら
もう一度あの羽根を
見ることが
出来るかも知れない。
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