フランス旅行回想録 【 Voyage 】

こちらは管理人のフランス旅行記です。
旅行前の準備のこもごもや、旅行中にフランスからUPしていた雑文、帰国してからの回想録などを置いています。

★2013/5 回想録
旅行準備から現地UP版までは、かつて【Hermitage】というおまけノベルを集めたブログにUPしていたものからの転載。
回想録からが、この「Voyage」でUPしはじめたものです。
(今はクレーム等により一部公開していません)

また、この旅行記には、追随するコンテンツとして【Webアルバム】がございます。
アルバムでは、管理人の訪れた各地の画像が2000px以上の大判サイズでご覧いただけます。
ベルサイユ宮殿や大小トリアノン宮などのお部屋が、壁紙の模様や扉のひび割れまで見える詳細さでUPされております。
スライドショーにすることも出来ますので、ご覧になれる方はどうぞ。
全部で1183枚の写真がご覧いただけます。

★2015/4 回想録
2015/6/12よりUPを始めました。
こちらもWebアルバムをUP中で、ただいまは3410枚の画像がご覧いただけます。
最終的には、およそ5500枚程度のアルバムになる予定です。

 

    早朝のホテルの部屋。
    外が少し明るくなってきて、私は窓辺へ寄る。
    どんよりと曇った空。
    バルコニーの手すりにも窓ガラスにも、水滴がびっしりとついていた。
    夜半に降った雨は止んではいたが、今日が良い天気だとはとても言えない。
    私がイライラを引きずっている理由は、ここにもある。
    本来なら、この旅はもう数日早い予定だったのだ。今日のイベントに合わせて。
    そしてこのイベントだけは、手配をドレ男がすることになっていた。けれど、状況を甘く見ていたドレ男は、ダラダラと手配を先送りにした。
    “急がなくたって大丈夫だろ、心配性もいいかげんにしてくれよ”
    そんな態度で。
    でも、ようやくヤツが重い腰を上げ、手配を始めてみたら、希望していた日はすでに予約で埋まっていた。
    『このあいだまでは空いていたのに』
    『だから言ったでしょ、早く手配しないと埋まっちゃうって』
    私はそう答えたが、文句を言ったところでどうしようもない。仕方なく、空きのある日に予約を取って、航空券の方を変更したのだった。
    “あとから文句を言うぐらいなら、自分でやれば良かったじゃないの”
    そう言う人もいるだろう。
    けれど、例の“パフュームパリ公演の件”で1度、このイベントをおじゃんにされている私は、あらかじめドレ男に「これだけは責任を持って自分でやって」と強く言っていたのだ。“これだけは”といっても、ネットから日本語でメールを送って、予約を取るだけのことだけれど。
    それでも、それが私にとってのあの件の落とし前(いや落としどころか?)だったのだ。
    が。
    曇天。
    いつ雨が降ってもおかしくない空の色。
    出発日の2週間前から、パリの天気予報をずっと見ていた。
    本来の希望日だったら、晴れていたのに。
    このことで私たちには、旅行前から険悪な空気が流れてはいた。
    『当日雨だったらどうするの?』
    そういう私に、仕方ないじゃんと開き直るドレ男。
    そんな数日があってからの出発だったが、それでも家を出てからは、努めて明るく楽しげに振舞っていた。内心は天気のことをとても気にかけ、そして、残念に思いながら。
    こういった下地があった上で、さらにパリ入り以降、ドレ男に不満ばかりを垂れ流されていたものだから、私はここまでキレたのだ。
    そしてやっぱりの、今朝のこの空模様。
    「天気は?」
    さすがにこの日のイベントは忘れていなかったらしく、起きぬけのドレ男が聞いてくる。
    「良いわけないでしょ。予報でずっと雨だって言ってたんだから」
    私は窓を離れて、iPadを手に取る。
    入れ替わりのように、窓辺に立つドレ男。
    「降ってないじゃん」
    ほらみろ、とでも言いだげな口ぶり。
    「そうね、降ってはいないわね。でもいつ降り出すかも判らないし、それに」
    「?」
    「地面は水溜りだらけでしょうねえ!!」
    「あ……」
    自分のうかつな発言に、ドレ男は黙る。
    「どうする?キャンセルする?私はキャンセルでもいいわ。全額返金されないけど」
    「……」
    「昨日するはずだった最終確認のメール、してないのよ。だから自動的にキャンセルになってるかもね」
    「連絡してないの!?」
    「してない。私がしなければいけないものでもないし。そもそもこの件は、あなたが全部手配することになっていたんだし」
    早朝ではあるが、いろいろと逆算すれば、時間の余裕はない。
    「え?じゃあ、どう…」
    「さぁ。どっちにしろ、雨が降ったら台無しだもの。私はどうでもいいわ」
    昨夜のうちに仕度だけはしておいた私は、手にしたiPadで、コメントへのお返事などを書き始めた。
    このとき私は本当に、この日のイベントがどうなってもいいと思っていた。どうせ、雨が降ったら台無しなのだ。
    私が本当に手を貸さないと判ると、ドレ男はやっと、自分がなんとかしなければならないと思ったらしい。スマホを手に取り…
    そこへ部屋の電話のベルが鳴った。
    レセプションからだった。
    「Mさんが1階(した)に来てるけど、部屋に通していいかって」
    「いいもなにも」
    私は呆れて言う。
    「通してもらわなきゃ。キャンセルするにしたって、お支払いはしないと」
    イベントをするにしても・しないにしても、当日になれば100%の料金がかかる。
    “その支払いは当日の朝、ユーロで”
    そういう契約になっていた。
    なんとも白けた空気。
    そこに部屋のドアがノックされた。
    急ぎドアを開けるドレ男。
    部屋に入ってきたのはスリムな日本人女性で、明るい声音で挨拶をしつつも、その表情は心配そうだった。
    「昨日連絡が取れなかったので、どうしたのかと思って。ゆずさんはいつも、返信が早かったから」
    Mさんには早い段階で、私が体調を崩す可能性があることを伝えていた。そのためMさんは、まずそれを心配したのだった。
    「あ、いえ、えーと、そういうわけではなくてですね」
    私はどこから説明したものかと、モニョモニョしゃべり始めた。だが、そうでなかったと判ったMさんは、そこから俄然、職業意識を発揮しだした。
    「ではお仕度を始めましょうか!」
    「え、あの」
    トロリーバッグから、手際よく仕事道具を取り出していくMさん。
    「ここに置いていいですか?」
    「あ…、はい」
    狭い部屋。
    鏡台を兼ねたライティングビューロに道具を置くも、全部は置ききれず、置けないものはベッドにも並べていく。
    「ではゆずさんには、仕度用の服に着替えてもらって」
    すっかりMさんのペースで、動き出してしまっている部屋の空気。
    「前開きのブラウスでしたよね。これを持ってきたのですが」
    私は日本から用意してきた白いブラウスを、広げて見せる。
    「これで大丈夫ですよー。ドレ男さんはどうされます?お部屋にいます?」
    「あ、朝食を買いに出てきます」
    「いってらっしゃーい」
    これ幸いとばかりに、ドレ男は部屋を出て行く。
    ゴチャゴチャと揉めていたはずの私たちは、Mさんが部屋に来て5分もしないうちに、イベントへ向けての流れに乗せられていた。

    さて。
    痴話げんかから始まったこの日の朝を、時系列で書いみた。
    旅行記だから時系列で。
    そんなセオリー通りにここまで書いたが、そろそろ状況の説明などをしてみようかと思う。
    Mさんはヘアメイクを生業とする、パリ在住の日本人女性だ。そして、ウェディングに関してのコーディネートもしている。
    私たちはこのMさんに、パリ及びベルサイユ宮殿でのロケーションフォトのコーディネートを依頼していた。
    いくつかある、この旅行の目的。その中で、もっとも大きなウエイトを占めるのが、このロケーションフォトだった。
    ので。
    ここから先は、いい歳をしたおばはんの「ベルサイユ de ブライダル」と、その道のりがメインになる。

    “他人のウェディングなんぞ興味ない”
    “ばばぁのウェディングドレス?はぁ??”
    “うざっ!”
    そう思う人は多いと思う。
    なので、そう感じた方にはここまででお引取り願いたい。読んで不快になったとしても、私には責任の取りようがない。そして、個人の旅行記を「読む・読まない」は各々の判断であり、その内容が公序良俗に反しない限り、不快な思いをしたとしても、自己責任だと考えているからだ。

    上記ご納得いただける方のみ、次の章へお進みください。


    【ベルサイユ de ブライダル】へつづく
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