フランス旅行回想録 【 Voyage 】

こちらは管理人のフランス旅行記です。
旅行前の準備のこもごもや、旅行中にフランスからUPしていた雑文、帰国してからの回想録などを置いています。

★2013/5 回想録
旅行準備から現地UP版までは、かつて【Hermitage】というおまけノベルを集めたブログにUPしていたものからの転載。
回想録からが、この「Voyage」でUPしはじめたものです。
(今はクレーム等により一部公開していません)

また、この旅行記には、追随するコンテンツとして【Webアルバム】がございます。
アルバムでは、管理人の訪れた各地の画像が2000px以上の大判サイズでご覧いただけます。
ベルサイユ宮殿や大小トリアノン宮などのお部屋が、壁紙の模様や扉のひび割れまで見える詳細さでUPされております。
スライドショーにすることも出来ますので、ご覧になれる方はどうぞ。
全部で1183枚の写真がご覧いただけます。

★2015/4 回想録
2015/6/12よりUPを始めました。
こちらもWebアルバムをUP中で、ただいまは3410枚の画像がご覧いただけます。
最終的には、およそ5500枚程度のアルバムになる予定です。

 



    パリの街を歩いていると、水の流れるちょっとしたオブジェや、こんな水栓をちょくちょく見かける。
    こうした水栓などは、ごく普通に設置されているのだろうけれど、私にはとても趣深く、ついしげしげと見てしまう。

    終盤は小雨の降る中となったプチ・トリアノン。
    その翌日は、晴天とまではいかない薄曇りで、街歩きをするにはちょうどよい天候となっていた。
    アパルトマンのキッチンで、買い出しておいたハムや卵、クロワッサンなどで簡単なボックスランチを作る。
    食べるか食べないか判らないけれど、この日は市内を結構移動するつもりでいたので、時間が惜しい。忙しく動いているときはカフェに寄ったりモノプリを探したりするのも手間なので、私は一応、軽い食事を持って部屋を出た。
    朝からメトロに乗って向かうのは、6区のマビヨン(Mabillon)。
    この日は市内をあちこち移動する。
    帰国直前の、よくあるバタバタ。
    旅程はよく考えてきたつもりで、概ねその通りに進めてきた。でも多少のずれは生じていて、行きたいと思っていた美術館に1つ行けないでいる。
    メトロ10号線をマビヨンで降りて、iPadのナビを開く。旅行中に行きたいところはすべて、出発前に登録しておいた。そのためナビはすぐに道案内を始めて、私はそれを見ながら通りを歩く。
    途中で3人組みの小銃を持ったアーミーとすれ違って、日本ではあまり感じない治安について考えたり、街角の彫像や扉や水栓の金具などに足を止めたり。
    そんなことをしながら、着いたのがこちら↓


    シール トリュドン



    シール トリュドン(CIRE TRVDON)は、ルイ14世の時代にサントノーレ通りで創業を始めたフランス最古のキャンドルブランド。
    初代は食料品店で、それから陶器や家庭用キャンドルの販売も始めたという成り立ちなので、はじめからキャンドルメーカーを目指していたのではないよう。
    きっかけは、店の近くにサンロック教会があり、そこにキャンドルを納めるようになったことから。
    独自の製法が評判となって、2代目の頃にはトリュドン家のキャンドルはルイ14世からも注文を受け、ベルサイユ宮でも使われるようになり、さらに1687年には王妃のおかかえにも。
    特徴は天然植物100%であること。化学成分がいっさい使われていないそうで、芯の部分もコットン100%。
    質の悪いものは、燃えるときに火のはぜるパチパチという音がするそうだけれど、シール トリュドンのキャンドルの炎は静かで揺らぎが少ない分、長時間火が点るのだそう。
    そして成分が植物100%の為、消したときに煙やススは黒くならず、天然素材の香りが残るとか。
    【シール トリュドン】(CIRE TRVDON)





    キャンドルは緑色のグラスに入っていて、香りを確かめたいときはガラスのポットの蓋を開け、蓋の方にこもった香りの方を聞く。
    それぐらい繊細な品なのだとか。


    ポンパドゥール夫人のカメオがついたシリーズも



    今もなお、ベルサイユ宮殿に納められているシール トリュドンのキャンドル。
    ベル宮だけでなく、フランス各地のノートルダム大聖堂や教会、星付きのレストラン、ホテルがシール トリュドンを使っていて、エルメス、カルティエなどのさまざまなトップブランドでも、コレクションのナイトパーティのときなどに使われている。
    先の「マリー展」でも、ギフトコーナーにはシール トリュドンのキャンドルが置かれていたので、このキャンドルメーカーをご存知で、ご覧になった方はたくさんいらっしゃると思う。


    ペーパーバッグとロゴマーク

    シール トリュドンのロゴマークは、飛び交う蜂。ミツバチが女王蜂に尽くすように、王のためにキャンドルを納め続けた忠誠を表したもの。
    私がこのシール(ワックスとキャンドル)ブランドを知り、その歴史を知ったとき、最初に思い浮かんだのは、たくさんの燭台の光にぼうっと浮かび上がるジャルジェ邸のエントランスだった。
    オスカル・フランソワがもし、実在の人物だったら。
    彼女の部屋を点した灯りも、あの7月12日に寝台の傍らへ置かれた燭台も、きっとシール トリュドンのはず。
    そんなふうに思えて、だからこの旅行では、「シール トリュドンを訪ねてキャンドルを買う」というのも、“これがしたい”と決めていたことのひとつだった。
    私はここで、ほんのいくつかのキャンドルを買った。
    本当はたくさん買って、オフ会などでリアルなお付き合いをいただいているお客さまへもお送りしようと思っていたのだけれど。
    …高っ。
    胸像になっているものや、装飾が美しいものが高額なのは判る。緑色のグラスに入ったシンプルなものだって、そのグラスはイタリア製の手吹きガラス。一つ一つが手作りで、形がそれぞれ似て非なるオンリーワンの品。だから高額なのも判る。というか、はじめから価格は判って来ていた。
    でも。



    壁のラックにぶっこみで置かれている普通のろうそくまで …いいお値段でいらっしゃる。
    お高いぶん、サイズもでかいけどなぁ…
    人気商品や、ことに美しいシリーズなどはネットで価格の確認も出来ていたけれど、柱状のシンプル過ぎるものは取り上げられていなくて、値段のリサーチが出来ていなかった。
    うーん、お高い。
    お土産用に20個ほど買おうと思っていた私は、そこですっぱり諦めた。
    …1個なら買えない値段じゃないけれど、10個20個となるとねぇ…
    いつまで見ていたって安くなるわけではないので、予算にあったものを何点か選んでレジに進む。



    お店のおねえさんが私の選んだものを確認して、奥から新しいものを出してくる。そして、ひとつひとつを丁寧に包装してくれた。
    それから何やら細長い紙束を取り出して、その中からしおりのようなものを1枚手渡してくれた。
    「今年の新作です」



    シール トリュドンでは香水も作っているので、これはこの年の新作のテスターなのだとか。
    お土産用に、みんなにもらえないだろうか…
    一瞬そんなことも思ったが、そこまでずうずうしいことは言えないので、ありがたく1枚いただいて、このテスターはアパルトマンに戻るとすぐに、ジップロックでパッキングした。
    あれから2年経つけれど、めったに開けないようにしているこのジップロックは、今でもほのかな香りを留めている。
    買い求めてきたキャンドルの方は、まだ包装すら解いていない。これは私が死んだとき、葬式で点してもらおうと思っているからだ。
    私のために葬式なんぞ出してもらう気はもとよりないが、いくら私が要らないといっても、ソコはいろいろあるだろうから、少なくとも多少のろうそくを点す場面はあると思う。
    そのときに使って欲しいと願っての購入だ。

    シール トリュドンは店内がとても素敵です。
    【Bigsize Photo】ではその様子がよく判る画像もUPしておりますので、場所の判る方はそちらもどうぞ。



    街角にある可愛いお店などを見て歩きながら、私は次に7区へ向かう。


    メトロ構内のポスター

    私はミュージカルが好きで、特に「CATS」には少し異常なぐらいの思い入れがある。
    観劇回数は10回とか20回とかいう数ではなく、このポスターを見たときにはテンション上がりまくりだった。

    メトロに乗って向かった場所は、7区のサン・ドミニク通り。
    ラ・トゥール・モブール駅から徒歩8分という場所にあるカヌレの専門店で、地図で確認するぶんには判りやすそうなところだった。
    カヌレは結構前に日本でも流行ったので、食べたことのある人も多いだろうし、どんなお菓子なのかも思い浮かぶ人は多いと思う。ボルドー地方のフランス菓子で、作り方が難しいため、パリにはあまり作るお店がないらしい。
    今回私は、このカヌレをお土産に渡したい人がいた。
    私より少々年上で、カフェを経営しているマダムだ。この方とは長いつきあいで、私とは真逆のタイプの人。いつも明るくエネルギッシュで、とてもとてもプラス思考。だからこそ、カフェのマダムという社交性の要る仕事が向いているのだと思う。
    難しい病気を抱えているのだが、本当にパワフルで、私にはない要素をたくさん持っている。
    私がカフェを訪ねて、近々フランスに行くと話したときに、パリでもっとも人気で美味しいと評判の『ルモワンヌのカヌレ』の話題になった。
    美味しいんですってね、本場のものはやっぱり全然違うのかしら。
    それだけの会話で、「買ってきて」と頼まれたわけではない。ただ私が贈りたいと思っただけだった。
    私はそのときのことなどを思い出したりしながら、駅から黙々とルモワンヌを探して歩いた。
    パリの有名店。そして日本人スタッフがいることもあって、日本のガイドブックにも載っているので、なんとなく気楽に歩き出したものの、サン・ドミニク通りは思ったよりも遠い。
    ガイドブックでは徒歩8分とのことだったが、実際はもっと歩いた気がする。


    ようやく見えてきたルモワンヌ

    疲れてきているので、エッフェル塔が見えたところで、ちっともテンションは上がらない。


    11:50am

    でもまぁ、見つかってよかったと私は思い、「まだ売り切れてないよね~」などと心中つぶやきながら、道を渡った。
    このお店のカヌレは本当に人気だそうで、ものによってはお昼前に売り切れるという。作り置きや冷凍はせず、毎朝8時から焼かれるカヌレを買いに、早くからお客さんが来るそうなので、私も午前中にはお店に着きたいと思っていた。
    が。


    臨時店休のおしらせ

    なんじゃこりゃー!!
    店のガラス戸に貼られたお知らせの張り紙。
    建物全体の電気系トラブルで、しばらくのあいだお休み。パッシー店は開いてます。
    ってまじかよ。
    どうしたものかと私はしばらくそのお知らせを見ていたが、パッシーと言われても土地勘はなく、案内を読んでも全然判らない。今までに行ったことのあるところだったら、距離感とか“あの辺かも”といったイメージも持てたかもしれないけれど。
    高級住宅地の16区なんか行ったことねぇし。
    私は心の中で30回ぐらい“まじか”とつぶやきながら、とりあえずエッフェル塔へ行くことにした。
    もともとカヌレを買ったあとは、エッフェル塔へ行く予定ではあったのだ。
    塔の足元にある郵便局から投函すると、エッフェル塔の消印が押される。そのため、朝、アパルトマンを出るときに、日課の絵はがきを持ってきていた。


    無料の公衆トイレ

    パリに行く・行ったというと、「トイレが大変でしょう」とよく言われるのだけれど、私は特に苦労したことがない。
    お金を払うタイプの公衆トイレも見たことはあるし、ガイドブックなどでも「カフェに入ってお茶でも頼んで、そこで借りるのがスマート」などと書かれていたりするけれど、無料の公衆トイレは結構あちこちにあるし、トイレの使えるお店もあるし、美術館などでも普通に使えるし、何が大変なんだろうなー、というのが私の感覚。
    公衆トイレは全自動式でクリーニングまでするから、ひとりが出ると、次に使えるようになるまで少し待たされたりするけれど、特に不便はないし、今までに「汚い!!」とびっくりした経験もない。
    エッフェル塔のまわりだと、歩道沿いにある程度の間隔でこの公衆トイレがある。
    駅近なところはガラガラにすいていて、塔が近づくにつれて順番待ちの列が長くなるので、エッフェル塔を観光するのなら、駅に近いすいたトイレに寄っておいた方が、時間の節約になると思う。


    よく判らないけどいるうさぎ

    今までフランスには3回行って、エッフェル塔には4~5回は行っていると思うのだけれど、いつもここにうさぎたちがいる。
    番をしているような男性がいるときもあるし、うさぎたちだけがいるときもある。小皿にコインを入れていく観光客がいたり、ただ撫でまわして行く人もいたり。飼い主だか番人だか判らない男性も、特にチップの要求もしないし。
    なんだか判らないけれど可愛いので、いつも足を止めて見てしまう。3歳ぐらいのときに、初めて飼った動物がうさぎだったのだ。
    秋田犬も2頭いたけれど、犬たちは物心ついたときにはすでにいたので、“初めて自分のために飼い始めた生き物”となると、私にはうさぎになる。お祭りで「これ以上大きくならないミニウサギ」というのが売られていて、小さなその姿が愛らしく、飼いやすそうと思った母が買ってくれたのだが…
    なんか知らんが、猫ほど大きくなった。
    私は少しだけうさぎを見て、昔飼っていたその“うさこ”を思い出したりしながら、エッフェル塔の足元の郵便局へ行った。
    のだが。
    「げっ」
    昼休みで、局のシャッターが閉まっている。
    この昼休みの洗礼はルルドでも受け、しっかり1時間以上待たされた。
    この後の予定があるので、私に郵便局が開くのを待つ気はまったくない。
    仕方ないので、私は局の自販機で切手を買うことにした。


    切手の自販機

    大丈夫かなぁ。
    そう思わないでもなかったが、これは2年前にも使ったことがある。ただそのときは、手伝ってくれた職員がいた。
    どうやるんだっけなー…
    記憶を頼りに、まずはタッチパネルで選択などをしてみる。
    国内便か、国際便か。
    それから地域を選んで、はがきか封書かを選んで、枚数を選んで、はがきを上部の計りに乗せて。



    料金が表示されたので、コインを投入するとシール式の切手が出てきた。
    これでいいんだよねぇ?
    確信が持てないまま、切手をはがきに貼る。
    そして横にあるポストの、国際便の投函口へIN。
    結果としては、このはがきはちゃんと日本へ着いていた。
    エッフェル塔の消印も押されていた。
    この自販機は塔の足元の建物の中にあり、郵便局が閉まっていても休みでも、確かこの自販機は使えたと思う。
    でも塔がクローズだと、ここには入れないかもしれない。

    街をバタバタと動きまわるこの日。
    私が次に向かうのは、凱旋門。
    と言っても凱旋門に行きたいわけではなく、目的はパティスリーだった。



    シャルル・ド・ゴール・エトワール駅に向かうメトロの中で、犬を連れたカップルと向かい合わせになった。
    大きな犬だったけれど、上の画像では、撮った角度のせいでちょっと小柄に写っている。顔の大きさを人間と比べると、この犬の大きさが想像しやすいかも。
    メトロでは、こうして犬を連れた人も見かける。ケージやペットキャリーに入れなくても、パリでは犬もメトロに乗れるのだ。
    この犬もリードをつけただけで、おとなしく座っていた。
    私が写真を撮らせて欲しいと頼むと、カップルは快く撮らせてくれた。


    凱旋門

    午後を過ぎると天候は快晴。
    巨大な凱旋門が、空の青さと雲の白に映える。
    ここに用があって来たのではないのだが、やはりそこは凱旋門。つい写真を撮ったり撮ってもらったりして、予定外の時間を使ってしまう。
    いかんいかん。帰国前の時間のないときに。
    私は目を覚まし、行こうとしていたパティスリーを探して、店の並んだ通りを歩き出した。
    のに。



    数mも歩かないうちに、シーフードレストランの店先に引っかかる。



    ぎっしりの氷が涼しげで、エビやカニの華やかさ、レモンの鮮やかな黄色、豪華な盛り付けに足が止まる。



    写ってはいないけれど、この内側にはエカイエがいて、黙々とカキを剥いている。





    こうした店先では、1つ2つ貝を剥いてもらって食べながら、グラスでオーダーしたワインなどを立ち飲みしている人をよく見かける。
    私も牡蠣を剥いてもらおうかな、と思ったりしたのだが、私は“食べる”と“飲む”が一緒に出来ない。飲むときは飲む。がっつり飲むだけ。そこに食べ物を入れてしまうと、てきめんに気持ち悪くなる。
    そういうタイプなので、地元の人がしているような、ちょっと食べてキュッと飲むというのが無理。
    お酒を頼まずに、牡蠣だけをいくつか剥いてもらっても問題ないのだろうけど、それはパリ的に粋じゃないんだろうなぁ。
    そんなことをウダウダ考えながら写真を撮らせてもらって、私はまたパティスリー探しに戻った。


    目的のお店



    パリでは年に1度、バゲットのコンクールがあり、このお店は2006年に優勝している。
    私は今回の旅行で、パンをお土産に持ち帰ろうと思っていた。
    私が登録している旅行のコミュニティサイトに、「パリに行くたびに、パンを自宅用のお土産に持ち帰っている」という人がいて、私もやってみようと思ったのだ。
    ここを選んだ理由は、とても単純。
    バゲットコンクールで優勝経験のあるお店の中で、この日私が動く動線に、この店がもっともうまく絡む立地だったからだ。











    私はここで5~6種類のパンを3つずつ買った。
    選んだものは、オーブンなどで軽い焼き直しをするのに向いていそうなもの。
    お店には小さなカウンター席があり、食べていくことも出来る。そのためケーキにもかなり気を惹かれたが、まだ行きたいところがあったので諦めた。







    この日、最後の目的地。
    そしてこの旅行中、特に楽しみにしていたそこは、このパティスリーから歩いて一直線上にある。
    それがこちら↓


    ジャックマール=アンドレ美術館



    669

    ジャックマール=アンドレ美術館(Musee Jacquemart-Andre)は、世界でも有数のコレクションを誇る個人収集による美術館で、その収集力は国家に匹敵するほどだったそう。
    銀行家一族の相続人エドゥアール・アンドレが、画家のネリー・ジャックマールに自身の肖像画を依頼したことから2人は出会い、結婚。
    美術品に深い造詣のあった夫妻には子がなく、そのため2人は、美術品の収集に夫婦の力を合わせたと言われている。
    2人には確かな審美眼があったようで、数十年間に渡って世界から約5,000点に及ぶ作品を収集したが、その多くが際立って価値のあるものだったという。
    中にはネリーが気に入ってイタリアで収集した絵画が、のちにボッティチェリの作品だと判明したこともあるそう。
    収集は絵画だけでなく、彫刻や天井画、巨大フレスコ画、暖炉、タペストリーなど多岐にわたる。それらを美しく飾り、収納するために、屋敷はいつも改装中だったとか。
    2人は資金も潤沢で、夫妻が収集にかける年間の出費は、ルーブルの予算をしのぐほど。オークションのときなどは、資金の足りないルーブルから「フランスのために落札して欲しい」と依頼が来たこともあった。
    結婚生活は、わずか13年。
    アンドレが亡くなったあとも、ネリーは夫の遺志を継いでコレクションを増やし続けた。
    ネリー亡きあとは、現在コレクションを管理しているフランス学士院が2人の情熱とコレクションを世に広めるため、夫妻の邸宅そのものを美術館として公開している。
    【ジャックマール=アンドレ美術館 HP】

    パリにはジャルジェ邸のモデルになった美術館が2つあり、このジャックマール=アンドレ美術館がそのひとつ。
    詳しくはこちらの書籍を↓


    ベルサイユのばらの街歩き / 編集:「ベルサイユのばら」を歩く会 / 発行:JTBパブリッシング / 池田理代子プロダクション協力


    オスマン通りの入り口付近



    この廊下の先に、美術館に続くアプローチへの入り口とチケット売り場、ミュージアムショップがある。


    行列しながらでも、美術品が観られる


    チケットカウンター(閉館時に撮ったもの)


    エントランスまでのアプローチ

    もしここがジャルジェ邸だったら、2人を乗せた馬車がこのアプローチを駆け抜けたのかも。
    そんな想像しながら、どんなエントランスが現れるのか期待する。


    ジャックマール=アンドレ邸







    この美術館は、そのコレクションだけでなく、カフェも素晴らしいと人気。
    カフェだけの利用も出来るので、“美術品に囲まれた豪華なお屋敷でランチセット”なんていう観光客でぎっしりになる。

    ジャックマール=アンドレ美術館の部屋数は16室ですが、そこには本当にたくさんの展示品があり、種類も多すぎるので、代表的なものやベルに縁のあるもの、私の趣味に偏ったものだけのUPになります。
    個人の収集品と思えないほどのコレクションなので、興味を持たれた方は公式HP等をご覧ください。
    また【Bigsize Photo】では、この美しい美術館とその収蔵品の数々を、かなり詳細にご覧いただけます。200枚以上の画像のUPとなりますので、場所の判る方はぜひどうぞ。


    絵画の間




    中央:ジャン・マルク・ナティエ作 ダンタン公爵夫人
    その上:フランソワ・ブーシェ作 ヴィーナス

    ダンタン公爵夫人の絵は、ジャックマール=アンドレ美術館公式HPのTOPやPR広告などに使われていたので、「ジャックマール=アンドレ美術館?ああ、ダンタン公爵夫人の?」というイメージがある。
    旅行者のブログを見ていても、この美術館の記事には、たいていダンタン公爵夫人の絵がUPされている。
    フランソワ・ブーシェは、ベルファンの方なら、きっとご覧になったことがある有名な絵がある。ミュンヘンのアルテピナコテーク所蔵なので、ちょっと小さめにUP↓


    フランソワ・ブーシェ作 ポンパドゥール夫人


    天井画


    大客間



    自分が今まで思い浮かべていたジャルジェ邸のサロンのイメージにとても近く、アホアホしいほどテンションがあがる。



    この大客間は壁が可動式になっていて、音楽の間とつなげたり区切ったりして使われていた。来客数に応じて部屋の広さを調節できる仕掛けは、当時としては画期的だったそう。


    タピスリーの間

    このタペストリーは、18世紀にボーヴェのタペストリー工場で編まれたもの。
    原画はル・プランス。先に出てきたブーシェの弟子。
    ボーヴェはフランス北部オー=ド=フランス地域圏オワーズ県の県庁所在地で、中世には伯爵領だったところ。
    伯爵領。
    その言葉だけで、頭の中がアラスへスイッチする。病気だと思う。



    額縁に入って置かれている左端の絵は、フランチェスコ・グアルディ作 ポルチコ・ベネティアン Portique venitien。
    【Bigsize Photo】には大きく鮮明な画像があります。




    書斎




    夫人の化粧室

    ここにはマリー・アントワネットお気に入りだったルブランの絵も飾られてるので、アップで↓


    ルブラン作 スカブロンスカ伯爵夫人

    この絵についてルブランは「スカブロンスカ伯爵夫人はとにかく大変に美しく、優しい。ちっとも賢くはないけれど」といったような、結構ストレートなコメントも残しているそう。


    かつてバスタブが置かれていたところ


    ダヴィッド作 ナントのアントワーヌ・フランセ伯爵

    ベル宮に巨大な戴冠式の絵がかけられているダヴィッド作の肖像画が、ぽんっと置かれていたりする。


    図書室



    この部屋では、特にファン・ダイク(左側の大きな絵)とレンブラント(もっとも小さな保護されている絵と、その左隣)が人気のよう。


    やはり人の集まるレンブラント


    レンブラント作 エマオの巡礼者 Les Pelerins


    レンブラント作 トーリンクス医師の肖像


    音楽の間



    音楽の間は2階まで吹き抜けの広間になっている。ここに客を招いて舞踏会なども催された。
    その際、2階にいるお客さまにも音楽が聞こえるように、吹き抜けとしたそう。





    これで1階をひとまわりしたので、階段へ向かってみる。



    ここは小さなホールのようなところで、画像右側に進むと階段へ、奥に進むと温室へと向かう。
    ジャックマール=アンドレ邸は1869年に建てられたが、この頃に建てられた大邸宅には、こうした温室を作ることが流行っていたそう。


    温室 「冬の庭園 Le Jardin d'hiver」


    その奥にある喫煙室




    ヴェネツィアから運んできた天井画


    温室から見たホール方向


    温室の窓から見える風景


    ホールから見た音楽の間


    見上げてみる


    名誉の階段 L'escalierd' honneur

    これは… 女装舞踏会だ!
    麗しい階段。
    私にはこの一角が、彼女がフェルゼンと踊ったあの場面、その舞台に似合うように思えて、無駄な妄想をいろいろした。



    この階段を、ドレス姿の彼女が下りてくる。
    ひゃー!たまらん。
    いや、軍服姿でアンドレを伴って下りてきたら… ああ、それもはまる。
    矢継ぎ早な妄想でいっぱいになりながら、私はやたらとこの階段の写真を撮った。



    子供の頃の2人が、ここを駆け回っていたら…とか



    対になった階段の踊り場のあちら側とこちら側で、2人が話していたり…とか。



    アホい想像をしながら、私は2階へと向かう。
    階段をのぼりきったところに現れるのは、巨大なフレスコ画だ。


    ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロ作 アンリ3世の歓迎

    中央で首にビラビラした飾り(ラッフル)を付けて、手を差し出している人物がアンリ3世。
    ヴェネツィアのコンタリーニ宮殿にあったものを、壁からはがして持ってきたそう。


    音楽家のギャラリー


    ティツィアーノ・ヴェチェッリオ作 フェデリーコ2世・ゴンザーガの肖像


    音楽の間を見下ろす


    より近く観られる天井画

    2階は主にイタリアの美術品が並ぶ。
    コレクションも主に、妻・ネリーのものが多いよう。


    アトリエ L'atelier

    正面の大きな絵は、ピエトロ・デ・ジョバンニ・ダンブロシオ作 聖カタリナ。


    右:セラミックス彫刻家ルカ・デッラ・ロッビア作 聖母子像
    左:ダニエレ・ダ・ヴォルテッラ作 ミケランジェロ像


    礼拝室として使われていた部屋


    奥にはボッティチェリが


    ボッティチェリ作 聖母子像


    続く間の奥にも名画の姿が




    左側:ヴィットーレ・カルパッチョ作 L'Ambassade d'Hippolyte,reine des Amazones,aupres de Thesee,roi d'Athenes
    右側:ボッティチェリ作 エジプトへの脱出


    ジョヴァンニ・ベッリーニ作 聖母子像

    この絵も購入時はベッリーニとは知らずに、審美眼だけで選んだそう。


    下:カルロ・クリヴェッリ作 聖人たち

    聖パウロ、聖アウグスティン、聖ブルーノ。
    聖ブルーノの指をくわえるポーズは、さまよう隠者を表している。


    聖書の場面を元に描かれた天井画








    ネリーの寝室




    寝台の装飾


    よりアップで

    小さなタッセルとフリンジで飾られた、手の込んだベッドスプレッド。
    オスカル・フランソワの寝台も、きっとこんなふうに凝った装飾がされていたんだろうな。




    アンドレ9歳の肖像






    アンドレの寝室

    この姫っぽいテイストの部屋が、アンドレの寝室。
    「え!?この色使いで?」と思ったが、これはアンドレの死後、妻・ネリーによって改装されたからだそう。
    私が書いた「くちなおしのマルリー アラス編」に出てくるマリー・アンヌの寝室は、この部屋をモデルにしている。


    ダイニングのような隣室が見える

    「マルリー アラス編」では、ここに蒸し湯台を置いたんだよな…


    アップで

    全部で16室。
    ネリーとアンドレの寝室のあいだに小さな一間があるので、これも数えれば17室とも思える館内を、これで1周りしたことになる。
    時間があったら。そして体力があったらあと一周したいところだが、時刻はもう閉館時間近くになっていた。
    ルーブルもそうだけれど、この美術館も圧倒的な展示数で、そして建物自体に見どころ満載。鑑賞するには気合と体力がいる。
    …時間がない。
    まだミュージアムショップも見ていないので、名残惜しくはあるが、邸を出る。


    重厚感も重量感もある扉の金具






    ミュージアムショップ










    すっかり人のいなくなった館内

    私はこの廊下の風景を、今【墓標の間】で連載している「雷鳴」の中で、厩舎に向かうために通る邸裏の通路として書いている。


    街角あちこち建つCATSのポスター


    18:30pm メトロ構内のショップ







    この旅行中で、もっとも細かく動き回ったこの日。



    夕食にいちごを食べながら、帰国のためのパッキングを始める。
    …あと1日。
    行きたい美術館は3つある。
    それをどう周るかよりも、私の困りごとは、冷蔵庫の中に余っているたくさんの食材だった。

    追記:シールトリュドン、1個だけ開けてみました。



    【貪欲な1日】につづく

    * ネット上にたくさんある旅行者のブログには、「ジャックマール=アンドレ美術館は館内撮影禁止」と書かれたものもありますが、私が行ったときはそのようなことはありませんでした。
    今はどうなっているのか判らないので、実際に行かれる方は現地で職員に聞いてみるか、館内の表示をご確認ください。
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    次の間と別館

    次の間
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