フランス旅行回想録 【 Voyage 】

こちらは管理人のフランス旅行記です。
旅行前の準備のこもごもや、旅行中にフランスからUPしていた雑文、帰国してからの回想録などを置いています。

★2013/5 回想録
旅行準備から現地UP版までは、かつて【Hermitage】というおまけノベルを集めたブログにUPしていたものからの転載。
回想録からが、この「Voyage」でUPしはじめたものです。
(今はクレーム等により一部公開していません)

また、この旅行記には、追随するコンテンツとして【Webアルバム】がございます。
アルバムでは、管理人の訪れた各地の画像が2000px以上の大判サイズでご覧いただけます。
ベルサイユ宮殿や大小トリアノン宮などのお部屋が、壁紙の模様や扉のひび割れまで見える詳細さでUPされております。
スライドショーにすることも出来ますので、ご覧になれる方はどうぞ。
全部で1183枚の写真がご覧いただけます。

★2015/4 回想録
2015/6/12よりUPを始めました。
こちらもWebアルバムをUP中で、ただいまは3410枚の画像がご覧いただけます。
最終的には、およそ5500枚程度のアルバムになる予定です。

 

    初めてのベルサイユを堪能した1日を終えて、ホテルに帰って私が真っ先にしたこと。
    それはもちろん、各種機器類の充電だった。
    いろんなもののバッテリーがギリギリ。デジカメに至っては、ベルサイユ半ばにして力尽きてしまわれた。
    こんなことがモン・サン・ミッシェルでも起きたらかなわない。
    私はプラグを継ぎ足して出来る限り多くのものをいっぺんに充電しながら、拍手コメントとメールの確認をする。
    この日はベルサイユの宮殿の中からも現地UP版の方の更新をしていたので、たいした更新内容ではなかったけれど「べるさいゆー!!」といったコメントがたくさん届いていて、書き込んでくださった方々の熱いベル愛が伝わってきた。
    そのほとんどのコメントが妄想をたっぷり含んでいて、私はそれがとても嬉しく、1人でケタケタ笑いながら拝読していた。
    それから。
    私はスーツケースを開いて、貴重品をまとめてあるファイルを取り出した。
    各種バウチャーや、パスポート紛失時のための証明写真、eチケットやそのコピーなどをまとめたファイル。
    そこから、今泊まっているホテルのバウチャーとモン・サンで泊まる予定のホテルのバウチャーを出す。
    これからレセプションに行って、明日からの予定を話し、大きな荷物を預かってくれるよう頼まなければならない。
    私は翌日から、1泊の予定でモン・サン・ミッシェルに行くことになっている。
    モン・サン行き自体は、手塚任せでパリ発のパッケージを手配しておいた。
    パリ⇔モン・サンの長距離バスと、モン・サンでのホテルがセットになったもの。
    こうしたモン・サンへの小さなパッケージは、パリからたくさん出ている。
    いろんな会社がいろんな特色を出していて、料金もいろいろ。
    日帰りで行けるものや、オンフルールやシャルトルなどの他の観光地を組み込んだものもあるし、モン・サンでの宿泊先も結構選べる。
    食事なども、ついていないものから、ホテルでのコースディナーが設定されているものなど、選択肢は本当にいろいろ。
    私の場合はもっともシンプルなプランだった。
    行き帰りの高速バスとホテル1泊を組んだだけのもの。
    ホテルはモン・サンの島内を選んだ。
    私の希望としては、15世紀の木骨造りで歴史的建造物に指定されているというAuberge-saint-pierreに泊まりたかったのだけれど、あいにく満室。
    モン・サンの島内ホテルはどこも客室数が少ないので、ホテルにこだわりがあるのなら早めに手配した方が良いよう。私も結構早く動いたつもりだったけれど、Auberge-saint-pierreは取れなかった。
    といってもこのホテル、そんなに人気のホテルではないみたい。
    クチコミサイトではそれなりの評価があるけれど、設備が古いとかベッドが狭いとか、マイナスの意見も多くある。
    私はそういう古さや不便さを体験したくて、ここにしたかったのだけれど。
    実際に私が泊まったホテルはこちら↓。

    La Mere Poulard

    ホテルとしても、名物のオムレツという意味でもとても有名なホテル。
    私がよく検索していて、泊まりたいホテルがたくさんあるCHATEAUX & HOTELS COLLECTIONの中の1軒でもある。
    Auberge-saint-pierreが満室だった段階で、私は「島内ホテルならどこでも」と手塚に丸投げしていたので、このホテルのチョイスに不満はなかった。

    話は少々それるけれど、今回モン・サンに行ったことで1番多く聞かれたのは「島内ホテルに泊まるのと対岸ホテルに泊まるのは、どちらがいいのか」ということ。
    私はまぁ、ほとんど迷うことなく島内を選んだけれど、でもどちらがいいか考えてしまう気持ちは判る。
    私も出来るなら、どちらにも泊まってみたいと思う。
    クチコミサイトでは、「モン・サン・ミッシェルは泊まるものではない。遠くから鑑賞するものです」なんて記述も見かけたし。
    どちらがいいのか。
    結局は、その人の旅の目的次第だと思う。
    私は美しい風景を観たかったのではなくて、革命時には監獄として使われた修道院の石造りに這う冷たさや、夜にしみる潮の音、海のコンシェルジュリと呼ばれた絶望感。そういったものを感じたくて行ったから、島内に泊まらなければ意味がなかった。
    でもその分、幻想的にライトアップされるモン・サンの夕景や夜景はろくに見ていない。
    そこが残念と言えば残念だけど、行動的に動ける人ならば島内からだってシャトルバスを使って離れるのは簡単で、夜景なんていくらでも観られる。
    貪欲に動けるなら、どこに泊まっても同じような気がする。
    だけどもし、次にモン・サンに行ったときにやっぱり1泊しか出来ないとしたら、私は島内のホテルを選ぶと思うけれど。

    そんなわけで、翌日にモン・サン行きを控えた私のしなければならないことは、チェックアウトの仕度だった。
    いったんパリのホテルをチェックアウトし、でもまた同じホテルに戻ってくるので、その間、大きな荷物はホテルでこのまま預かっていてもらいたい。
    そして、翌日の出発時間がとても早いので、出来ればチェックアウトの手続きは今日済ましておきたい。
    そんなことをレセプションに行って、おねがいしなければならない。フランス語も出来ず、英語もそれほど得意ではないというのに。
    私は2つのホテルのバウチャーを持って、1階へと降りた。
    フロントデスクにいる、初老のスタッフ。
    「えくすきゅぜも?」なんて、最初だけはフランス語で話しかけてみたりする。
    一応iPadの翻訳に、想定されるいくつかの言い回しをフランス語登録してはおいたけれど…
    私の呼びかけに顔を向けた老紳士風スタッフは、判りやすく気難しい顔立ちをしていてちょっとびびる。
    私は足りない英語を補うためにバウチャーの日付けを示して、モン・サンから戻ったらまたこのホテルに泊まるから、スーツケースを預かって欲しいと頼んでみた。そして、翌日の高速バスの集合時間がとても早いから、慌しくならないように今夜のうちに清算を済ませたいのだとも。
    スタッフは、にこりともしないままいくつか私に質問をして、それからようやく「おお!判った」というような表情をした。
    それから、話がつながったことで仕事が片付いたと思ったのか、気難しい表情のまま雑談を始めた。
    「パリは初めてかい?」
    「そう。フランスも、ヨーロッパも初めて」
    「どうしてパリへ?」
    「憧れよ。子供の頃から。5歳のときから来てみたかったの」
    本当は、5歳の私が憧れていたのはパリではなくてベルサイユなのだけれど、そんな細かい違いまで説明出来るほど私に英会話力はない。
    「ほう、それはすごいね」
    初老のスタッフは「ちょっと待って」と言いながら、パリ市内の大きなマップを出してきた。
    「見てごらん。私たちのホテルはとても便利なところにあるんだよ」
    指で大きな通りをずっと辿ってみせる。
    「ほら、この道をまっすぐ行けばモンマルトルの丘まで行ける。美しいところだ」
    それからその人は、パリの名立たる観光地をひとつひとつ教えてくれた。
    私はその英語を一生懸命に聞いたけれど、固有名詞だけはフランス語になったりするので理解が遅れたり、私の語彙が足りなくてかみ合わない会話にもなってしまう。
    「パリには素晴らしい美術館がたくさんある。ぜひ観ていきなさい。本当にたくさんあるんだよ」
    お薦めの美術館をわーっとあげられたけれど、フランス語の読み・発音では私にはほとんど判らない。でも、もっともお薦めなのがポンピドゥーセンターなのだとは判った。最初「Centre Georges-Pompidou 」と言われて、全然聞き取れなかったけれど。
    そういえばパリ在住の日本人の方が「ベルサイユの発音は難しいから、もし宮殿への道を聞くなら紙に書いて見せた方がいいわよ。絶対に通じないから」と言っていたけど、そうなんだろうか…
    レセプションスタッフのおじさんは終始気難しく怖い顔をしていたけれど、どうやらそういう顔立ちのよう。結局1時間以上も私にパリのあれこれを教えてくれた。
    このことは、今振り返ってみると非常に印象深い。こんなに長い時間1対1で英語で話したことはなかったし、“地元の人が現地で語るパリ”を聞くというまたとない経験ができたから。しかも、この日私は1日ベルサイユを歩き回っており、足腰はもうガタガタのヨボヨボ。フロントデスクをはさんでのこの1時間以上の語らいは立ち話で、いろんな意味で私にとっては思い出深いひと時となった。
    そして、もともとの用件については、私が戻るまで荷物は預かっていてくれること、清算は戻ってきてからの最終的なチェックアウトのときでいいので心配しなくてもいいということで話が落ちついた。
    「モン・サン・ミッシェルはとても素晴らしいところだよ。とても風が強いから帽子に気をつけて。そして標高が高いから寒いんだ。あたたかくして行きなさい」
    最後にそうアドバイスされて、私は急ぎ部屋へと戻り、チェックアウトの仕度を始めたのだった。

    明けて翌日。
    この日はパリに来て初めて、雨模様ではない朝だった。
    早朝の、まだ重い蒼。
    持って行くもの・置いていくものをもう1度確認してから、スーツケースに鍵をかける。
    ぱぱっと身支度をして、私はかなり早く部屋を出た。
    昨日しておいた話が、通っていない可能性があるから。
    レセプションにずっと同じ人がいるとは限らないし、勤務の交代などで話が引き継がれていないこともある。モン・サンへ行く高速バスに遅れるわけにはいかないから、チェックアウトで手間取るわけにはいかない。
    問題なく話が通っていればいいけどなぁ。
    若干の心配をしながらエレベーターを降り、私がレセプションのあるホールまで行くと。
    昨夜の初老のスタッフが、フロントデスクの前で仁王立ちをしていた。
    「おお!ユズ、来たね」
    もちろん私を待っていてくれたわけではないのだろうけれど、私はとても嬉しくなって、スーツケースをガラガラと押してデスク横のスタッフルームの前まで行った。
    スタッフのおじさん…というか若めのおじいさんは私のスーツケースを引き取って、預かりスペースに引き入れる。
    「戻ってくるまで預かっておくからね。安心して行っておいで。チェックインは何時になる?」
    「たぶんとても遅いと思う」
    「そう。判った」
    そんなやりとりをして、さて、思ったよりも時間に余裕が出来たな、なんて私が思っていると、おじいさんスタッフは唐突に「オレンジジュースは好きか?」と聞いてきた。英語が堪能ではない私は、質問が唐突すぎて、最初、聞き違えたのかと思った。
    「ユズ、オレンジジュースは好きかい?」
    「?? 好き」
    「では、こちらへおいで」
    おじいさんスタッフはポケットから鍵束を取り出して、ホールの横にあるレストランの扉を開けた。
    そこには朝食のための支度が簡単に済んでいた。数種類のコールドドリンクのサーバーがもう動いていて、バターロールなどのパンの類もバスケットにたくさん盛り合わせてある。
    わさっと小山みたいに積まさっているゆで卵はまだ暖かくて、さまざまな種類のハムもスライスされてケースに並んでいた。
    「朝食はまだだろう。好きに食べていきなさい」
    おお!
    意外なことに私は驚きながらお礼を言って、オレンジジュースとゆで卵をもらった。
    「モン・サン・ミッシェルは寒いからね。素晴らしいところだから楽しんでおいで」
    そう見送られて、私はホテルを出た。



    早朝のメトロ。


    ほぼ始発なので、ホームも車内もガラガラ。


    メトロChaussee D'antin La Fayette駅の出口。向かいの角は、とても有名で大規模なデパート「Galeries Lafayette」。


    昼間は人も車もたくさん行き交う通りだけれど、さすがに閑散としている。
    バスの集合場所はこのギャラリーラファイエット前だけれど、集合時間まではずいぶんあるので、誰も来ていなかった。
    よーし。せっかくだから、オペラ座でも観に行くか!
    そう思いついた私は、歩いていくらでもない距離のオペラ座へと向かう。



    斜め裏側から見たオペラ座。清掃車があちこちを走りまわって、道をきれいにしていた。


    オペラ座正面。建物上部の金色の彫像が建っている部分。その下に金色の波うった縁取りがあるように見えるでしょう?これは金色の“顔”がたくさん並んでいるの。Bigsize Photoが観られる人は、見てみてね。面白い顔がたくさんあるから(笑)


    オペラ座の前は7本の道が交差する大きなラウンドアバウトになっているから、日中なら交通量が多すぎて、たぶんこんなガラすきの遠景は撮れないと思う。
    私はオペラ座の外観をうろうろと観てまわり、たくさん写真を撮った。
    それから集合場所へと戻ってみると、何組かの旅行者が所在なさそうにたたずんでいた。
    歩道まで乗り込んでくる道路清掃車に追われて、あちらこちらと場所を変えながらバスを待つ。
    みんな日本人かな?
    ざっと見たところ、1人なのは私だけみたいだった。
    やがてそこに大きなバスが横付けされ、私たちはそれぞれドライバーに予約の名前を言って乗り込んだ。
    モン・サンへ行くには、国鉄SNCFのGare MontparnasseからTGVで2時間。Rennesで降りて、そこからバスに乗り換えて1時間20分。個人で行くのは難しくない。でも、たぶんこの頃には結構疲れているだろうと予想がついたし、慣れない駅でTGVに乗るのに右往左往、バスを乗り逃がして長い待ち時間なんてことを想像したら、直行の長距離バスを使っちゃうのが私にはベストと思えて、今回はこのような移動にした。
    結果的には良かったと思う。
    乗ってしまえば着くのだし、高速を使うので車内にはトイレなども完備されている。日本人観光客ばかりだから、トイレに行くにもうたた寝するにも、バッグを適当に放り出しておいたってなんの心配もないし。
    実際のところ私はかなり疲れていたので、バスがパリを離れてあまり見所のない風景に入ると、少しばかりうとうとと眠った。
    この休憩はすごく助かって、ここである程度の時間仮眠したりぼけーっと出来たりしたおかげで、モン・サンについてからまた動き回れたようなものだった。



    立ち寄り休憩地点のドライブイン。


    こちらでのおすすめのお土産はチーズとりんご製品で、このジュースも人気だとか。


    このあたりのチーズは白カビ系で、ノルマンディー3大チーズの1つだそう。真空パックなので、帰国日が1日や2日後なら日本へのお持ち帰りも問題ないと説明された。


    かわいいものがたくさん。早くもモン・サン・ミッシェルのお土産もちらほら。


    奥はレストランになっていて、すっごい素敵。Bigsize Photoで見てみて!


    30分ほどの休憩&お土産タイムをはさんで、バスはさらに移動。
    次の休憩地点はここから近くの、町の中心地。



    立ち寄り地のPont-l'Evequeの市役所。革命の頃から経つ建物だそう。


    まだ朝だというのに、パン屋さんのショーケースにはこんなものもすでにたくさん。近くのデリのお店では、朝っぱらから長~い串に刺した大きなあぶり肉を焼いていて、それを食べながら観光している人たちもいた。


    この木組みの街並みが、ポンレヴェックの町の観光ポイント。他には歴史的建造物である教会など。(教会はBigsize Photoで見てください)


    川を利用した昔のままの家の造り。トイレ代わりにもしていたとかなんとか…


    郵便局。ここからも絵はがきを出していました。はがきが届いた人は消印を見てみてね。


    この町からモン・サン・ミッシェルへは、あと160Km。
    現地UP版の「Voyage」をUPしたり、ちょっと仲良くなった日本人の若妻さんとおしゃべりをしていたら、退屈する間もなく遠くにモン・サンが見えてきた。
    車窓からの写真も撮りたかったのだけど、逆の窓側からの景観だったので断念。近づくモン・サンの姿、無理してでも撮っておけばよかった。



    モン・サンへの連絡道路。


    島内へは、この無料のシャトルバスで。かなり頻繁に行き来しているので、それほど待たされない。
    バスが止められる駐車場からモン・サンの島内までは約2.5Km。歩いちゃいけないわけじゃないらしいけれど、シャトルは無料だし、歩く人は皆無。


    でも私は、片道4ユーロの馬車に乗るのを楽しみにしていた。
    けど。声をかけたら断られた。馬が眠いんだって。


    ぎゅうぎゅうに混んだシャトルの窓越しに近づくモン・サン・ミッシェル。


    停留所から、残り300mは歩く。


    長年憧れたモン・サン・ミッシェルは大規模工事中。ちょっと残念だけれど、自然と景観を守るためだから仕方ない。


    潟を眺めながら島へ向かう。


    潮の満ちていない潟はこんな感じ。




    この門をくぐると、いよいよモン・サン・ミッシェルの島内へ。


    モン・サン・ミッシェルはただ今大規模工事中。
    観光の利便性のために作った堤防と道路のせいで湾の潮の流れが変わってしまい、土砂が堆積して潟がだんだんと陸地化しいるので、このままだとモン・サンが海に浮かぶ景観が観られなくなってしまうそう。そのため、今使っている連絡道路は将来的に取り壊し、その代わりに陸橋を架けて電車を走らせるのだとか。
    私が行ったときは、その陸橋を架けるための基礎工事をしていたよう。完成は2015年とのこと。
    工事中なのは多少残念な気もしたし、けれど、めったに見られない光景でもあるので興味深く眺め回してきた私。
    それは、昔錦帯橋を観に行ったときも工事中で、そのときは大変残念に思ったのだけれど、観光ガイドのおねえさんが「架け替え工事はめったに見られないですよ」と言ってくれて、そのおかげでよりいっそう興味を持って見られたことからだ。
    景観の損なわれた部分に不満を感じたって仕方ない。嫌なら行かなきゃいいだけで、フランスのガテン系おにいさんをたくさん見られて、私にはそれもよい思い出になった。いや、なんかね、やっぱりイケメンが多くてね。

    第1の門を抜ければ、いよいよ島の中へ。
    まずは手荷物を預けて身軽になろうと、私はその日泊まる予定のホテルへ向かった。



    博物館見学のときにもらった簡単なマップ。見づらいけれど、ざっとした位置関係は判るかと。


    手塚手配のホテル「La Mere Poulard」。モン・サン・ミッシェルの名物になっているオムレツは、疲れた巡礼者のためにプーラール夫人が考えたそう。とても有名なので、足を止めて写真を撮る人がいつもたくさん。日本にも支店があります。


    王の門。小さいけれど跳ね橋になっていて、落とし格子のしかけもある。この向こうから、メインストリートのGrande Rueが始まる。


    左側の階段を上がっていくと、王の門の上部とアルカード塔に出る。城壁沿いの外周の通路は眺望もいいです。




    こんな隙間の小路がちょこちょこある。


    登りきって振り返ると、こう。


    そして振り仰ぐと、こう。


    これはアルカード塔付近からの眺めだったような。


    修道院の姿はどこからでも見える。


    グランド・リュで最初に買ったもの。Le Petit BretonのCreme glacee caramel sale。フランス語で書くと偉そうだけど、塩キャラメルソフトでございます。これが美味しくてねぇ。通りがかるたびに買っていました。私はもともとコンビニスウィーツを主食にしているので、モン・サン滞在の1日半はこれがメインの食事でした。


    Eglise St-Pierre。サン・ピエール教会。岩山をくりぬいた洞窟内の教会。入り口横の像は、100年戦争の際に大天使ミカエルのお告げを聞いてフランス軍を導いたジャンヌ・ダルク。








    灯される祈りのあかり。


    この棚から好きなキャンドルを選んで


    お支払いはこちらへ。もっとも多く飾られている赤や青や緑のもので2ユーロ。教会の中には観光客以外いないので、何食わぬ顔をしてパクることも可能。
    でも普通、そんなこと出来ないよね。
    これを見て「あっ!」と思った方もいるでしょう。ゆずからお土産を送りつけられた方、あのキャンドルはこの棚から連れ帰ったんですよ~

    それから、この1つ上の、キャンドルが並んだ棚の写真ですが。
    元の画像だとオーブが写っているんです。「Voyage」用の画像は縮小しちゃうんであんまり判らないと思うけれど。
    次回の更新では、もっとたくさんのオーブが写ったものが出て参ります。


    チェックインの出来る時間になったので、再びホテルへ。預けておいた手荷物と鍵を受け取り、今日のマイルームに向かう。


    古めかしくてギシギシいう階段。今までここを訪れたたくさんの著名人のポートレートが壁面いっぱいに。
    この階段を、客室までのぼるのだけれど。スーツケースをパリのホテルに預けてきて、本当によかった。ここを自分で運び上げるのは無理。パッケージツアーで来ている観光客のスーツケースは、ポーターが4~5人でガンガンあげていたけれど、それだって大変そうだった。


    私がモン・サンに持って行ったのは、この簡易キャスターバッグ。たたむと持ち歩いているバッグにも入る大きさなので、行きはバッグに入れて、帰りはお土産で増えた荷物と持ち歩きバッグをこのキャスターに入れ、荷物を1つにまとめるようにしていた。ちゃちい作りだけれど、そのぶん軽いし転がして歩けるのでとっても重宝。1500円ぐらいで買ったもの。


    左がルームキー。右がクロゼットの鍵。古めかしくて大きな鍵に、なんかテンションあがる…


    お部屋のようす。


    日本のさる高貴なお方も滞在されたそうで、お写真が飾ってありました。肖像権が心配なのでお顔はぼかしております。


    バスルーム。建物は古びた情緒が色濃いけれど、水周りは清潔でピカピカでした。


    チェックインを済ませ、グランド・リュですでにいくつか買っていた小物などを部屋に置いて一休み。…をしながら、小一時間ほどはがきを書く。
    この日は日曜日だったので、モン・サンの郵便局はお休み。ポン=レヴェックのたばこやさんで買っておいた切手を貼って、私は再びホテルを出た。
    モン・サンの郵便局では、モン・サン・ミッシェルを象った消印を押してくれるけれど、必ずしもではないよう。
    なので、モン・サン滞在中は時間を変えたり投函する場所を変えたりして、たくさんはがきを出していた。
    これは結果的には惨敗で、どなたさまのところに出したはがきも自宅に送ったものも、モン・サンの消印のものはなかったです。
    残念…


    モン・サンでの目的の1つ、Le Logis Tiphaine ティフェンヌの館へ。王軍の軍隊長だったベルトラン・デュゲスグランが妻のために建てた14世紀の館。ティフェンヌは占星術師で、彼女の占いの部屋や家具・調度品などは中世のまま。


    島内には4つ博物館がある。1か所9ユーロ。4か所全部観るなら共通チケット18ユーロになる。


    左が博物館チケット。右が修道院のチケット。修道院は個人で9ユーロ。


    岩山を這う外階段を登っていくと、こんなお方が。


    最初の部屋は、確か新婚のご夫婦のお部屋だったような。

    1フロア1部屋の造り。1部屋見ては廊下へ出て、螺旋階段を登っていく。


    館は今もデュゲスグラン家所有。


    お部屋のさまざまな写真はBigsize Photoにたくさんありますので、ご覧になれる方はぜひ。中世の家具や調度品は趣深いです。


    館を出て海を臨む。館は岩山に張り付くように建っているので、この館の中を観ながら進むと修道院への近道にもなる。


    館の出口。


    扉を抜けると、修道院の下に並ぶ大修道院住居のある通りに出る。


    そしてようやく修道院の入り口へ。哨兵の門。


    柱の向こう側、写っていないけれど、右側にカウンターが並んでいる。奥に見えるのはギフトショップ。でも、こちら側からショップに入ることは順路上できない。


    片すみ置かれたスーベニアコインの自販機。1枚2ユーロ。島の遠景の絵柄と、大天使ミカエルの絵柄。

    金色のこのスーベニアコインはいろんな観光地にあって、私はあちこちのものをこまこまと買い集めていた。でも、モン・サンのものは特に絵柄がきれいだったので、私はスタッフのいるカウンターに両替してもらいに戻った。
    20ユーロ紙幣を出して、2ユーロにくずして欲しいと頼んでみる。
    スタッフの50歳ぐらいの男性は、快く応じてくれたのだけど。
    戻ってきたのは紙幣交じり。
    「違うの。全部2ユーロのコインにして欲しいの」
    私はさらにもう1枚、20ユーロ札を出す。
    「これ全部?全部をコインにするの?」
    びっくり顔で苦笑する男性。
    海外では両替は嫌がられることが多いし、断られることも多いのは判っていたけれど、両替機も見当たらないし、ふもとまで降りて両替してくれるところを探して戻るなんて絶対無理。
    「どーしても全部コインにして欲しいの。友達へのお土産にしたいから、2種類を10個ずつ買いたいの。おねがい、全部2ユーロコインにして」
    私がそう頼むと、その人はきょろきょろと他のカウンターのスタッフを見た。
    他のスタッフたちがちゃかすように笑って「おねがいだって~」みたいなことを言うので、その男性は「仕方ないなぁ」と笑いながら全部を2ユーロコインにしてくれた。
    これはたぶん、私が修道院を訪ねたのが夕方近かったからだと思う。パリからの日帰りの観光客はもう引き上げている時間だし、泊まり客でも夕方から修道院に入る人は少ない。
    つり銭用のコインの心配も、もうそれほど心配ないと思ったのだと思う。
    私はこの自販機で、せっせと20枚のコインを買った。
    これも届いた方がいると思います。きれいなコインだったでしょう?


    棟と棟の隙間を進んでいく。




    西のテラス。海抜80mで、地平線も水平線も見渡せる。


    南側、対岸からの連絡通路の眺め。


    北側からは海の眺め。湾はまだ沼地か湿地のよう。


    扉を開けて、教会に入ってみる。


    11世紀に完成し、その後崩壊と修復を繰り返したそう。


    観光客はすっかりいない。








    列柱廊。僧の憩いと瞑想の場。




    列柱廊から尖塔を眺める。塔の先には黄金のミカエル像が立っている。




    食堂。




    708年、アヴァランシュに住む司教オベールの夢に大天使ミカエルが立った。「かの岩山に聖堂を建てよ」とのお告げを受けたが、オベールは信じなかったので、3度目の降臨でミカエルは司教の頭に指を差し込んだ …というモン・サンの成り立ちにまつわるによる彫刻。今でもアヴァランシュには、指の痕の残る頭蓋骨が保管されているとか。


    迎賓の間。暖炉で焼いたイノシシ肉やシカ肉が振舞われたとか。








    牢獄時代の19世紀に作られた滑車。車輪の中に6人の囚人が入り、人力で荷車を回す。1日2tの日用品を搬入できたそう。


    死体安置所のピエタ像。


    騎士の間。僧たちの仕事部屋だったところ。この部屋の隣にもギフトショップがある。




    スーベニアコインを買うために両替をしてもらったカウンターのあるホールまで戻ってきた。


    尖塔に立つ黄金のミカエル像のレプリカ。


    修道院の外周をまわりながら山をくだる。


    ここから降りてきたのか…


    人も少なになった王の門付近。


    部屋に戻ろうと思ったら、レストラン側の入り口でおにいさんたちが楽しげにオムレツを作っていた。これがただ料理しているだけじゃなくて、調理器具を打ち鳴らしたりかっこつけて卵を割ったり、見ていてなかなか楽しいの。


    4Fの部屋までよろめきながらのぼる。ここは2Fだっけ、3Fだったっけのピアノバー。湾を眺めながらお酒とピアノが楽しめるそうです。行ってないから判らんけれども。


    螺旋階段の途中にある裏口。デジコードがついている。ポーターさんたちはここから宿泊客のスーツケースを搬入。それでも重労働。


    この石の小路は3つ上の写真の左側に写っている階段とつながっていて、1Fまで降りなくても直接島を廻る城壁の通路に出られる。また、小路を山側に登っていけば山の中腹まで一気に行く近道になる。でも、途中から足もとはあまりよくない感じになるので、スカートや華奢な靴を履いた女性・お年寄りには勧められないかなぁ。

    モン・サンのホテルは、たぶんどこもある程度の時間になると出入り口をロックしてしまいます。夜遅くまで出歩きたい人は、帰ってきたときに自分でデジコードを解除して入るシステム。チェックインのときに暗証番号を教えてくれるので、忘れないように。そして、デジコードの使い方に不安があるなら、チェックインの際にやり方を教えてもらった方が安心です。「とか言ったって、フロントには誰かしらいるでしょ」と思うかもしれないけれど、ほんとに誰もいなくなるので。(少なくとも、私が行ったときのラ・メール・プーラールはそうだった)


    まだ明るく見えるけれど、もう夜の7時半頃。


    いったんホテルへ引き上げた私。
    腰痛やら筋肉痛やらで、もうよろよろ。むくんだ足はパンパンで靴を脱ぐにも手間取るぐらい。
    バスタブに熱めのお湯を溜めて、オランジーナを飲みながら半身浴などしてみた。すんごい太さになっている膝下をよくもんだりして。
    途中でうっかり寝そうになったりしながら、それでも時計を気にしつつ、短く慌しい一休みが過ぎる。
    気持ち的にはちっとも休めていない。
    だってこれから、大潮が始まるのだ。


    第10話 「モン・サン・ミッシェル 大潮と夜明け」へ続く
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