フランス旅行回想録 【 Voyage 】

こちらは管理人のフランス旅行記です。
旅行前の準備のこもごもや、旅行中にフランスからUPしていた雑文、帰国してからの回想録などを置いています。

★2013/5 回想録
旅行準備から現地UP版までは、かつて【Hermitage】というおまけノベルを集めたブログにUPしていたものからの転載。
回想録からが、この「Voyage」でUPしはじめたものです。
(今はクレーム等により一部公開していません)

また、この旅行記には、追随するコンテンツとして【Webアルバム】がございます。
アルバムでは、管理人の訪れた各地の画像が2000px以上の大判サイズでご覧いただけます。
ベルサイユ宮殿や大小トリアノン宮などのお部屋が、壁紙の模様や扉のひび割れまで見える詳細さでUPされております。
スライドショーにすることも出来ますので、ご覧になれる方はどうぞ。
全部で1183枚の写真がご覧いただけます。

★2015/4 回想録
2015/6/12よりUPを始めました。
こちらもWebアルバムをUP中で、ただいまは3410枚の画像がご覧いただけます。
最終的には、およそ5500枚程度のアルバムになる予定です。

 

    今回のフランス行きで特に楽しみにしていたのは、ベルサイユ宮殿を訪ねることと大潮のモン・サン・ミッシェル。
    その中でも特に、アモーが楽しみで仕方なかった。
    私の持っている何冊かのガイドブックにもアモーはそれほど取り上げられていなくて、写真も里村の中の王妃の家や酪農小屋のものが1~2枚程度。
    それに私はアモーの中でも、ピンポイントに観たいところがあったから。

    きっちりと四角い佇まいのプチトリアノン宮。
    そこを出て、最初に見えたのはこんな風景だった。



    愛の神殿。ガイドブックによっては“愛の殿堂”とか呼び方いろいろ。私が中学生のときに初めて買ったものでは“コリント”と書かれてたなぁ。




    小川にかかる橋を渡って神殿へ。


    広さは右下の男性をご参考に。


    愛の神殿からプチトリアノンを臨む。


    プチトリアノンを出て庭園に向かうと、まず視界に入ってくるのは愛の神殿。
    原作で描かれた王妃さまとフェルゼンのコマが思い浮かんで、いやでもテンションがあがる。
    ひとことで言うなら「やーん、本物だわー」という感じ。
    人の流れはプチトリアノンを出て左へ廻る道へ流れていたのだけれど、私は神殿につられて人の流れを外れ、たいして幅の広くない小路へ向かった。
    池、というか沼、というか、そんな大きな水辺沿いをぐるりと歩きながら、愛の神殿を眺める。
    この小路を、かつてアントワネットも歩いた。
    本当にここでフェルゼンと密会したんだろうか。
    こんなに丸見え状態のところで“密会”になるんだろうか、と思いながら。
    小さく簡素な木戸と橋。
    そこを渡るとすぐに建つ神殿。
    私が行ったときは、5人ほどのグループが出て行くところで、神殿にいたのはカメラを持った男性が1人だけ。
    おかげでほとんど貸切状態で、静かにゆっくり見学することが出来ました!
    ラッキーだったわ。
    しかも写真を撮っていた男性が、腹ばいになったり変な格好になったりとものすごく真剣に写真を撮っていたので、私も人目を気にすることなく写真が撮れました。
    真ん中に立っている彫像と、神殿の天井の美しい彫り込みを写真に収めようとすると、床に寝転んだり這いつくばったりしないと撮れないの。
    私も床にべったり座り込んだり、這ったりしながら撮ってきた(笑)
    このあたりの写真は【Blog&Photo】の大きい写真で見てみてくださいね~
    天井の細かい彫り込みや支柱の装飾、彫像の天使の羽など、とっても美しいです。

    愛の神殿から眺めるプチトリアノンはきっちりと四角く、そして柔らかい黄色に映えていて、その色味のまろやかさが王妃さまの目には、故郷のシェーンブルンを彩ったマリアテレジアンイエローに映ったのかなぁ、と思ったり。
    (関係ない話だけれど、シェーンブルン宮殿は一部を賃貸住宅として一般に貸し出しているとか。住宅問題を解消するためだとかで、2LDK・家賃は4万7千円だそう。入居は公務員に限るとのこと)

    そしてこの愛の神殿から、プチトリアノンと逆方向を振り返ると遠くアモーが広がっています。



    小さく見える田舎家を目指し、森の小路を歩いてアモーへ。


    大きな池沿いに進む。池には白鳥や水鳥たちが住んでいて、観光客がさかんにパンなどを投げていたり。
    びっくりするほど太った鯉もうじゃうじゃいます。この池にボートを浮かべて、鯉つりなどもしたそうです。


    王妃の家。




    朽ちた螺旋階段。王妃さまが田舎風ドレスでここを降りたのかも。


    王妃さまの“羊飼いのドレス”。
    この写真は、「マリー・アントワネット物語展」で撮ったもの。ポーランドスタイルという着こなしだそう。


    点在する田舎家。










    今でも動物を飼っている牧場。


    この子たちは幼稚園か学校の見学だったみたいで、このあと牧場の中に入れてもらい、10人ぐらいで動物たちのお世話体験みたいなことをやっていました。












    点在する田舎家を巡るだけでも、結構な広さ。
    そして、そこに続く酪農小屋やいくつかの牧場。
    ベルサイユ宮殿でもらえるパンフレットで“王妃の領地”とされているこのエリアは、本当に広い!
    道幅自体がそんなに広いわけではなく、足元もあまり良くないので、宮殿の庭園のように自転車で廻るとかトランがあるという便利な手段のないところ。
    思った以上の広さにちょっとやばいものを感じても、ぜいぜい言いながら歩いて廻るしかないです。
    (レンタサイクルは、プチトリアノン宮の駐輪場に置いていかなければならない)
    興味のままに奥まで行くと、戻るのが本当に大変。
    と思いつつも、行ってしまえば全部を観たくなってしまうもの。
    私はアモーを離れ、プチトリアノンの庭園に向かいました。
    が。
    このアモーの見学中に、凡ミス系トラブルが1つ起きました。
    …カメラのバッテリーが切れた…
    ベルサイユ宮殿での見学はとても混雑している上に、部屋によってはかなり暗いです。
    いちいち立ち止まってカメラのON/OFFをしている余裕や、構えている余裕はなく、電源は入れっぱなしで流し撮りをしていく感じでした。
    ピントが合わなかろうが構図が気に入らなかろうが、とにかく撮る。
    そんな感じで歩き回っていました。
    そのつけがアモーでまわってきて、なんと無念のバッテリー切れ。
    ここまで来て!
    あまりの無念に愕然としました。
    予備バッテリーなんかそもそも持っていないし、フル充電で1日もたないなんて今までなかったこと。
    まったく予想もしなかった充電切れに、「まじかよー!」という言葉しか出なかった…
    最初に考えたのは、当時【Hermitage】でフランスからリアルタイムで更新していたコラムのこと。
    お寄せいただいていたコメントでは、アモーの写真を楽しみにしていらした方は多く、非常に申し訳なく思いました。
    でも、いつまでもやらかしてしまった凡ミスにショックを受けていても仕方ないし、幸いなことにバッテリー切れといっても警告のアラームが鳴っただけ。
    あと数枚は撮れる!
    私は気分を入れ替えて、私のもっとも目的として楽しみにしていた場所へ向かうべく足を向け…
    いったんカメラをしまおうとバッグを開けたら、そこにちょこんとおさまっていたiPad mini。
    お~!そういえばこれは写真も撮れるはず!!
    容量も16GBある!
    それに気づいたときには、へにゃへにゃになりそうなほど安堵しました。
    5歳のときからの憧れを抱えてフランスまで来て、目的の場所で写真が撮れないなんて、本当はだだ崩れになりそうなほどがっかりしていたから。
    このことで私はまた少し気合が入り直し、結構疲れてはいたけれど、庭園の見晴らし台を探して歩き出した。けれど。
    行けども行けどもアモーの森林から出られず。
    iPadのバッテリーへの不安から写真には撮らなかったけれど、どこへ行っても草ぼうぼうの森林。
    道も、幅が50センチぐらいの土くれの小路で、他の観光客にもまったく会わず。
    それも1本道ではなくて、アモーの中を網目状に分岐しており、ベルサイユの領地のマップを見ても詳しくは書かれていないあたり。
    360度、背の高い草と樹木ばかりで、自分がどちらに向かっているのかも判らず、私はすっかり迷子になってしまいました。
    世界1の観光者数を誇るベルサイユ宮殿で、なんで迷子になるんじゃーい!
    なんで人っ子ひとりいないんじゃーい!
    と叫んでみたところで本当に誰もいなくて、私はアモーの山の中で本当に遭難するんじゃないかと思いました。
    これについては、あとで判ったことだけれど、私が愛の神殿の方から廻ったのが悪かったみたいです。
    プチトリアノンを出て、みんなが行く左方向から観光すれば、人も多くて道も広く整っていたのが帰り道で判りました。
    移動距離も短く、効率的に観られたようです。
    そのミスはアモーを巡る中でも取り返すことが出来たのに、私は夢中になり過ぎて草地の道に入りすぎてしまったのだと。
    結局私はアモーの森の道を1時間ぐらい徘徊して、もうどうしようもなくなりました。
    かくなる上は。
    どっちかの方向へ、ずっと行くしかない。
    短絡的ではあるけれど、領地という以上、一定方向へとずっと行けば壁に行き当たると思ったので。



    ようやく見えた壁。


    しばらく進んで、やっと建物を見つける。


    入り口。中央にいるのが、道を教えてもらった学芸員のおねえさん。


    この建物に着いたとき、扉はシンと閉まっていて、人の気配は全然せず。
    マップ上でこの建物がどれなのか判らず、とりあえず扉を開けたらおねえさんがいた、と、そんな感じでした。
    私は“これで今自分のいる場所が判る”と安心し、情けな~い面持ちでおねえさんにマップを開いて見せました。
    「ここはどこなの?迷ってしまって」
    私がそう聞くと、おねえさんはマップを一緒に覗き込んで、「ここよ」と指をさして教えてくれました。
    49番か…
    私の行きたいところは51番の見晴らし台。
    よーし、それほど遠くない!
    私はお礼を言って、建物を出かけ
    「ちょっと!」
    「はい?」
    「中を見ていかないの?」
    「あ~」
    気が急いていた私は、せっかく立ち寄ったそこを見ようともせずに建物を離れかけ、おねえさんに呼び止められたのでした。
    これは今振り返ると本当にありがたく、このとき呼び止めてもらわなかったら、私はここを見落としてしまったに違いないです。
    学芸員のおねえさん、本当にありがとう!
    数段の外階段を降りかけていた私は、おねえさんに呼び止められるままに建物に戻り、改めて中を見回してみたけれど。
    お姉さんが椅子を置いて座っているスペースを過ぎた多角形の小さな部屋。
    私以外の観光客は1人だけ。
    全体にすっきりとした作りのその場所は、部屋…ではなくて、落ちついて見れば小さなホール。
    ほんとにほんとに小さなホールで、それほどの人数も入れなさそう。
    しかも、ホールから奥へ続くらしい扉も狭く小さいもの。



    シンプルで清潔感のあるホールの配色と扉。


    扉の向こうはいきなりのガラス張り。そこからは1歩も入れず、ガラス越しに暗い空間を眺めるだけ。


    なんじゃこりゃ…
    私はおねえさんのところに戻り、聞いてみる。
    「ここはなんの目的で作られたところですか?」
    「マリズシアタ」
    …え?
    「マリーズシアター?」
    王妃の劇場?ほんとに?
    「ここがマリーの劇場なの?ここでマリーが歌ったり踊ったりしたの?」
    「そうよ。ここがマリーの演じたところよ」
    おねえさんの答えに私は勢い込んでガラス張りの扉へ戻り…
    暗さに目が慣れると、劇場内の造りがだんだんと浮かび上がってくる。
    思ったより狭い!小さい!
    舞台には背景の大道具も並んでいて、ここが王妃さまが「セビリアの理髪師」やら自作の曲やらを披露した場所…
    上の写真で判るかしら、劇場内の様子。
    舞台上手側が写っていて、手前にはぼうっと客席なども写っているのだけれど。
    一応、資料用の写真↓を貼っておきます。




    この王妃の劇場の内部写真は、【Bigsize Photo】の方でもご覧になってみてください。何枚もあるけれど、最後の3枚には明るさやコントラストなどの調整を加えてみたので、大きなサイズでもそこそこ鮮明な劇場の様子がご覧いただけると思います。1番シャープに見られるよう工夫したので、画像の大きさは不揃いだけど。
    あと、すみません。ゆずも写りこんじゃってます(笑)

    王妃の劇場。
    見学場所としては大きな山場のひとつだと思うのだけれど、訪れる人はびっくりするほど少ない。
    私が見学している間に見かけたのは、せいぜい5~6人。
    (私も見落としかけたし)
    プチトリアノンの庭園の片すみで、密やかにたたずんでいる王妃の劇場。
    あの小さなホールで開演を待ちながら、アントワネットお気に入りの取り巻きたちが扇をパタパタ揺らしたのかしら…

    王妃の劇場ですっかりテンションの上がった私は、その勢いでこの49番の王妃の劇場から51番の見晴らし台へと向かう。
    マップ上では近いのだけれど…



    劇場から30分ぐらい歩いて、見晴らし台へ。迷いつつでなければもっと近いのかも。




    この建物は意外と大きく… というか見晴らし台が意外に狭く、全体が撮れるほど建物からさがることが出来ませんでした。全体像が見られる組写真を【Bigsize Photo】にUPしているので、そちらもご覧くださいませ。


    見晴らし台からプチトリアノンを眺める。


    さて。
    ようやく着いた見晴らし台。
    といっても、私が来たかったのはここではなく、ここはただの目安。
    この見晴らし台の近くに、私がこの旅でもっとも見たかったところがあるはず。
    私はその場所を探して、この見晴らし台付近の山中を歩きまわる。
    ここは写真ではよく判らないかもしれないけれど、本当にアップダウンのある山道で、踏み固められただけのわき道や、草のつるをつかんで登るような斜面の小路もある。
    もちろん観光客がめぐりやすいちゃんとした道があり、そんな得体の知れない草の路に入るのは、宮殿の整備の人かマニアックな観光客だけだと思います(笑)
    私は手を汚し、はぁはぁ言いながら山の中を1時間以上歩きまわったけれど、目指す場所は見当たらない。
    「判りにくい場所だから、表示板を見落とさないで」とのことだったのだけれど。



    その表示板は見つかったものの、目指す場所はさっぱり現れず。


    時刻は早くも夕方近く。
    もう諦めるか…
    ちらりとそんなことも思いつつ、でもやっぱり諦めることも出来ず、私はもう1度見晴らし台まで戻ってみる。
    見晴らし台には学芸員のおにいさんがいるから。
    それは最初に見晴らし台に来た時から判っていたけれど、でも、顔見知りっぽいおじいさんとずーっとおしゃべりしていて、話しかけづらかったのよ。
    だけどもういいかげん疲れてきていて、そんなことも言っていられない。
    私はおしゃべりしているフランス語に割って入って、道を聞いてみました。
    「マリーとフェルセンのグロットはどこですか?」
    「ああ、グロットね」
    おにいさんは英語で丁寧に説明してくれたのだけれども…
    正直なところ、そのときはその英語をあまり理解できませんでした。
    なにしろ明確なランドマークのない山の中。日本語で説明するのだって難しい。
    でも、自分が探していた場所がグロットの真反対だったことは判り、とにかくそちらに向かってみることに。



    グロットへ向かう道。この道は斜面にあるのだけれど、この下にももう1本、似た道がある。歩きながらおにいさんの英語を思い返していたら、おにいさんが「似ている道があるから間違えないで。そちらの道は修復していて危ないから」と言っていたことが唐突に理解でき、ちょっとニヤニヤしながら歩いたりしてました。


    グロットに向かう道から、見晴らし台を振り返ってみる。


    やっと出てきた本物のグロットに近い表示板。この案内はここ以外にも立っていたので、すっかり騙されて関係ないところをずいぶん探してしまった。


    グロットへ続く道。結構森っぽいでしょう?アモーでも、こんな森林の道を右往左往していました。
    そしてこんな道を歩きながら、私が以前にUPした「終の夏」で想像した森の小路や、異国の祭りを開いた木々のふところに似た風景が、アモーの山の中に本当にあったんだと嬉しくてなりませんでした。


    あんまり歩きやすいとは言えない小路。でもきっと18世紀の頃よりもずっとよく舗装されているんだろうな。


    もうすぐグロット。ここまで来るのにも分かれ道があって間違えたりして、30分以上はかかっている。


    見えた!


    ここがグロット。王妃さまとフェルゼンが密会を重ねたという洞窟。今は柵が建てられているけれど、以前は中に入れたそう。


    中は4畳ぐらいはあるかな。そんなにないか…
    ちょっと横たわれるぐらいの石造りのベンチが出来ているのだけど、判るかしら。
    こちらも【Bigsize Photo】にたくさん写真があるので、中の様子、見てみてくださいね。


    グロットをふさぐ鉄柵をつかんで、中を凝視する私。
    斜面の上の方に通る道を歩く人の声がして、私はなんとなく聞き耳を立てた。
    その人たちが、この奥まったグロットまで来るのかと。
    でも、近づいた声はすぐに遠ざかり、姿も見えなかった。
    ここにこんなものがあると知らずに、通り過ぎていく人たち。
    グロットは、宮殿でくれる案内マップにも載っていないところだから。
    そして、こんなふうに近づいて、そして遠ざかる人の声や気配に、王妃さまとフェルゼンも息を潜めて聞き耳を立てたのかと。

    見晴らし台からグロットまでは、結構深い森の道。
    18世紀ならもっと、山は深く夜は暗かったはず。
    この道を、王妃さまは想い人に会うために1人急いだんだろうか。
    灯りを抑えた真っ暗な、夜の森を。



    帰り道。明るいけれど、夕方過ぎ。庭園奥にはもう、人の姿はない。


    ぐるりと廻って、やっと戻ってきたプチトリアノン。18世紀の王族の離宮を楽しむというよりは、山の中ばかり歩いてきたような…


    プチトリアノンまで戻ってきた頃には、すっかりヘロヘロになっていた私。
    それでもショップに寄ってお土産類を買い、それがまた結構な量と重さになって、私を余計にヘロヘロにさせました。
    バッグは背負って、お土産の荷物は自転車の荷台にくくりつけ、よたよたとアポロンの泉を目指して戻っていく。
    途中にあったアイスクリーム屋さんのカート。帰りには寄ろうと思っていたのに、ちょうど店じまいをしているところで残念でした。
    考えてみれば、その日はホテルで朝食を取ってから、1日何も口にしておらず。
    (そんな余裕はこれっぽっちもなかったのよ)
    レンタサイクルを返却してから、休憩がてら庭園のベンチで買ってきておいたサンドウィッチを食べました。
    気温が低かったおかげで、傷んでいないのが幸いでした。



    アポロンの泉とカナルの始まりのあたり。すっかりひと気もない。ボート小屋も閉店。


    宮殿方向へ向かう緩いのぼりの道。泉を振り返ると、すごくきれいな雲が。
    写真に写っている男の子が隣を歩くおとうさんにさかんにそれを伝えていたけれど、おとうさんはチラリとも見ようとせず、私と男の子は目が合って、2人でなんとなく頷き合いながら何度も雲を振り返りました。


    こっちから見た雲の方が、美しさが判るかも。光が何条にも射している…


    やっと戻ってきた宮殿。


    宮殿に近づく頃には疲労困憊。
    足のむくみも最高潮で、ゆるゆるだったショートブーツの足首まわりがパンパンになりました。
    どのくらいパンパンって、翌朝、両足首付近が圧迫されたあざになったぐらい。
    このあざは、帰国しても2週間ぐらい消えなかった。
    足腰もかなりヨボヨボ化して、1歩の歩幅が10センチぐらいになっちゃっていて、ほんとにすり足で歩くおばあちゃんみたいになっていました。

    私はこのあと、来た道を辿り返す形で駅へ戻ったのだけど。
    帰りのルイ14世騎馬像の広場には、朝はいなかったもの売りがわんさか。
    エッフェル塔を模したお土産品を売りつけようとしつこくまとわりついてきて、疲れて余裕をなくした神経にピリピリきました。
    そして、ちんたらちんたらと歩いて戻ったRERの駅は、すんごい人でごったがえしていました。
    帰りの乗車券は持っていた私。
    でもみんな並んでいたので、私もなんとなく最後尾に並び…
    一応10分ぐらい並んでみたけれど、全然列の動く気配がない。
    人によっては、列をスルーして奥へ進んでいるような?
    様子がまったく判らないし、アナウンスもないので、私も列を無視してかき分けて、たいして広くもない駅構内の奥まで行ってみると…
    券売機が壊れていました。
    いくつかある券売機が全部動かないらしく、そこに並んだ人たちが外までの行列になっていただけ。
    乗車券を持っている私にはまったく関係のない行列でした。
    私はぎゅうぎゅう詰めの人並みを改札に向かい、持っていた乗車券を通したのですが、なんと改札のゲートもまともに動かず。
    5センチぐらいの隙間が出来ただけで、通れるほどには開かなくて、最終的には無理やりにこじ開けて通ってきました。
    乗車券を持っている人は、みんなそうしていたから(笑)
    ホームに降りると構内の混雑が嘘のように人は少なく、静か過ぎるぐらい。
    モニターを見て、ホームに止まっているのがパリ市内に向かうC線の列車なのを確認し、近くにいたおっちゃんグループにも聞いて確認し。
    「この電車はパリ市内に行きますか?」
    「行くよ!」
    「大丈夫、シテ島の方を通るラインだよ」
    「ここ見て」
    おっちゃんの1人がわざわざモニターの真下まで行って、“St.Michel Notre Dame”を経由するのだと教えてくれてありがたかったです。
    フランス人は英語を嫌うと聞くけれど、この旅行中にそんなことはまったくありませんでした。
    お店やホテル、観光地はもちろん、街中で通りすがりの人にちょっと道を尋ねても、英語が通じないとか嫌な顔をされるということはなく、フランス語のトラベル会話集が活躍することもなかったです。

    すいたRER車内。
    パリに戻る車窓を見ながら、ホテルまでの道を考える私。
    荷物も多いし、とても疲れていて、まともに考えたらまっすぐ帰った方がいいに決まっている。
    んでも。
    どうせC線に乗っているなら、Champ de Mars Tour EIFFELで降りてエッフェル塔に寄ろうかな…と、そんなことを考えていました。
    といっても、それは観光するためではなくて、エッフェル塔の郵便局に行きたかったから。
    エッフェル塔の南塔(南側の足もと。シャンドマルス公園側)には郵便局があり、ここでは記念切手が買えて、消印もエッフェル塔を模したものを押してくれます。
    翌日にはモン・サン・ミッシェルに移動する予定だから、この日にベルサイユで買った絵はがきを、なんとしても今日中に出したい。出来れば、エッフェル塔の記念切手と消印で。
    RERに揺られながら、私はウダウダとそんなことを考えて、結局Champ de Mars Tour EIFFELで降りてしまいました。
    もう歩くのも嫌だったけれど、旅行で1番情熱を傾けるのはお土産選び。
    ご当地から送る絵はがきもお土産の1つと考えている私には、記念切手や限定の消印の魅力には抗えない。
    前かがみな超老婆状態でエッフェル塔に向かっていたら、道にたくさんいる小物売りのおにいさんたちも、さすがに誰も売りつけに来ませんでした。



    駅を降りると、ばかばかしいぐらいニョッキリと建っているエッフェル塔。


    ニューヨーク大通りをはさんだ反対側には、可愛らしいメリーゴーランドもあったり。




    塔の中心から、真上を仰ってみる。


    イエナ橋とエッフェル塔。絵はがきになりそうな構図。


    こちらはシャイヨー宮。


    そのテラスもエッフェル塔のビュースポット。


    混んでいるとは聞いていたエッフェル塔。
    この日も大変な混雑で、北塔の足もと辺りには、塔にのぼりたい人たちのものすごい行列が出来ていました。
    エレベーターで上がるための列はもう締め切りになっており、うねうねと並んでいる人たちは階段で登る順番待ちの人の列で、2時間待ちとかなんとか…
    私は旅行前にエッフェル塔にのぼる事前予約を試みていたけれど、その時点で3か月先まで埋まっていたので、早々に諦めてた。
    だから並んでいる人波に参加する気もなく、加えて体力もなく、写真を撮りながらまっすぐに郵便局へ向かいました。
    けれど。
    郵便局、すでに閉店。
    え~! せっかく来たのに。
    と、ちょっとは残念に思ったけれど、私はすぐに気を取り直して、郵便局の隣にある切手の自販機コーナーに向かいました。
    ここでは局が閉まっていても切手が買えるし、ここに設置してあるポストから投函すれば記念の消印も押してもらえるので。
    テーブルもあったので、そこで小さなメッセージと住所を書き、いざ自販機へ。
    旅行ガイドには、手順は簡単だと書いてあった。のに。
    判らん。
    全然判らん。
    使い方がさーっぱり判りませんでした。
    仕方なしに呼んできたエッフェル塔のスタッフも、その自販機の使い方があまり判らないよう。
    地元のフランス人なら簡単に出来るのだろうと思って、私は気軽にエッフェル塔のスタッフに声をかけてしまったのだけれど、そうでもなかったみたい。
    かといって、「お忙しいでしょうからもう結構です」とか「お気持ちだけでじゅうぶんです」という英語もフランス語もひねり出せず、非常に気まずい時間が流れました。
    でも、お手間はおかけしてしまったけれど、その方のおかげで切手は無事に発券されて、ベルサイユの絵はがきはその日のうちに投函することが出来ました。
    ただ1つ残念だったのは、自販機で買う切手は記念切手ではなかったこと。
    デジタルで印字された、シール式の切手になってしまいました。
    けれど消印の方はちゃ-んとエッフェル塔を象ったものが押されていました。
    私からの絵はがきの届いた方。
    トランプ柄やベルサイユ宮の写真の絵はがき、消印を見てみてくださいね~


    今回の旅行の中で、もっともハードだったこの日。
    振り返って今思うのは、やっぱり1人で行って良かったということ。
    こんなの誰かと一緒に行ったのでは、付き合わされる人がかわいそう。絶対面白くないに決まってる。
    私には非常に有意義な1日だったけれど。
    そしてこの翌日には、もう1つのお楽しみである“大潮のモン・サン・ミッシェル”が待っている。
    こちらも大変美しい光景をたくさん写真におさめてきました。
    次回の更新は、おそらく写真ばかりになるかと。
    どうぞよろしくお願いいたします。


    第9話 「モン・サン・ミッシェル」へ続く
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