フリーエリア2


アンドレが記憶喪失…。アンドレが…。私の事を…婚約したことを…忘れてしまったなんて…!こわい…!このままアンドレの記憶が戻らなかったら…!
………………………………………「お嬢様!!お嬢様!!どうなさったのですか!?お開けくださいまし!!お嬢様!!」
「オスカルお嬢様!!お開けくださいまし!!」
ジュリアとミチルが扉を叩きながらオスカルに呼び掛ける。
「あなた達,どうなさったの?」「あ…奥様!!お嬢様がお部屋に籠ったきり出ていらっしゃいません!!お休みにもならずお食事も召し上がらず…!このままではお身体が心配です。どうしましょう?奥様…!」
とうとうジュリアは泣き出した。「ありがとう。ジュリア,ミチル。オスカルも今,アンドレのことで動揺しているのです。心配かけましたね。あなた達はもう戻っていいわ。」
「はい…。」
ジュリアとミチルを見送ってジャルジェ夫人はどうしたものかと考える。今はオスカルの精神衛生を気にしなければ。
「オスカル…。開けますよ?いいですね。」
鍵を掛けていたのだろう。カチャリと音がして扉が細く開いた。
部屋は真っ暗だった。明かりをつけると,オスカルは長椅子に膝を抱えて座っていた。ずっと泣くのをこらえていたのだろう。瞳には涙が溜まっている。可哀想に…。自分の家なのに自分の部屋なのに泣けないなんて…!1人でいる時も人目を気にするかのように振る舞っているなんて…!
「は…母上…。」
「オスカル…。休みもせず…食事もとらないと…メイド達が心配していましたよ。アンドレはきっと…きっと戻りますよ。だから今はきちんとお食事をとって…お休みにならなくては…ね。」
そう言って娘を抱きしめたのだけれど…。細いのよ…。心労のせいなのか,食事をとらないからなのかわからないけれど…娘は痩せてしまったていたのよ…。アンドレ…!お願いよ!!早く記憶を取り戻して…!あなたのオスカルは今,心が死にそうなのよ…!
…藤稔薫の居間…
アンドレ様が記憶喪失…。私の事もジャルジェ家令嬢のオスカルのこともわからないのね。
…アンドレ様に私の事をわかってもらってお付き合いしてもらえれば…!そうすれば,あの自信に満ちたあのジャルジェ家令嬢オスカル・フランソワはどうなるのでしょう…?
オスカル・フランソワ…。見てらっしゃい。これからが私の力のみせどころよ。あなたのそのプライドなんて粉々に砕いて差し上げてよ。
…桜川総合病院…
「ごきげんよう。アンドレ様。調子はどうですか?」白いツーピース姿の薫がアンドレの近くに座る。
「あぁ…。少し頭痛がしますが大丈夫です。…どなたですか?僕は記憶にないんですが…。」
アンドレは困った表情をする。彼は本気で困っている。
「アンドレ様…私はあなたと同じクラスで藤稔薫ですわ。
あの…私はアンドレ様のことずっと好きでした。お付き合いしていただけますか?」
アンドレの手をとって瞳を見つめる黒薔薇乙女の薫。
「薫…?こんな記憶のない俺でいいと言うならば…。」
薫の手を握るアンドレ。オスカルへのあの想いを忘れて……。
オスカルが病室へ入ってきた。
「アンドレ…大丈夫か…?…薫さん…。来ていたのですか?」
「ええ。30分くらい前からいましてよ。オスカル・フランソワ…私,アンドレ様とお付き合いすることになりましたの。」
え…!アンドレが…私のアンドレが薫さんと付き合う…?私との婚約を忘れて…!
「だからもうあなたはアンドレ様に二度と近づかないで!もう帰りなさい!!帰って!!アンドレ様のお身体に障るわ!!」
薫はオスカルの腕を掴んでドアの外まで追いやる。そして意地悪く笑う。
「自信に満ちたオスカル・フランソワも男がいないとこんなに弱々しいのね!あなたの婚約者とやらはもう私のことしか見てないわ!!目障りよ!帰りなさい!!」
意地悪い笑顔でドアを閉める。
オスカルの瞳から涙が溢れる。
スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。