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こちらのノベルは、当サイトが2012/05/11に30万HITを迎えたことを受けて、ゲスト作家の月桃さまが贈ってくださった30万にちなんだ物語です。
月桃さま作の「あれから1年」の姉妹作にもあたります。
隊長とアランのコミカルなやり取りをお楽しみくださいませ。
【あれから504日】
「隊長。ご在室でしょうか?」
『班長か。入れ』
「はっ。失礼いたします」
『どうした?何か用か?』
「実は昨夜、サロン・ド・ユズでこのようなチラシを貰いまして。~ありがとう!御来店30万名様記念感謝祭~だそうです」
『ふむ。で?』
「抽選でいろいろ貰えるみたいです」
『ほう?例えばどんなものだ?』
「えー、まず三等がメゾン・ド・ラ・ボーテのエステ招待券10枚綴り」
『なるほど。それで女を磨いて来いということか』
「それから二等が工場直送プレミアムモ●ツ500ml缶×24本入りが6ケース」
『それは良い。隊の皆で呑めるな』
「で、一等がスウェーデンのグランドホテルとかいう所のペア宿泊券」
『スウェーデン?』
「ええ。スウェーデンですよ、スウェーデン。ストックホルム。ああ、王妃の情夫…じゃなくて陸軍連隊長の本宅の隣みたいです。ここのホテルは」
『そうなのか?…ストックホルム…か』
「あとは、感謝祭の期間中に来店した先着100人に柚子の香石鹸のプレゼントが…」
『班長!お前そのストックホルムに私の名で応募しておけ!』
「はあ?なんで俺が?第一、一等の応募資格はこの一年で100回以上来店した奴って書いてあるぜ?」
『そんなもの。ハンコでいっぱいになったメンバーズカードが屋敷に5、6枚ある。1枚がマス目25個だから125回は行っている』
「いつの間にそんなに」
『そうだな。ジャルジェの名は出さない方が良いな。オスカル・フランソワ・グランディエで応募しておいてくれ。あいつをサプライズで新婚旅行に連れて行ってやるのだ。ふふふ』
「なんだよ。それ」
『良いだろう?あいつにフィヨルドを見せてやりたい』
「おい。フィヨルドはノルウェーだろ。ストックホルムは北欧のヴェネツィアだ。ストックホルム郊外のドロットニングホルム宮殿は北欧のヴェルサイユと呼ばれている」
『ほう?よく知っているな』
「これでもガキの頃は家庭教師がいたんでね」
『とにかく。あいつは未だフランスから出た事がない。遠出と言ってもアラスの領地かノルマンディーの別荘がせいぜいだ。日頃の労いもしなくては…な』
「とかなんとか言って、本当は叶わなかった初恋の相手の生家を見てみたいだけじゃないのか?」
『そっ、そっ、そんなことはないぞ』
「やっぱりな。あんた分かり易すぎだぜ」
『なっ、何を言うか!北欧にはあいつ好みの金髪美人がうようよいる。目の保養にもなるではないか!』
「隊長。あのヤローが好きなのは金髪美人じゃなくて、あんたの金髪だろ?」
『じょ、上官をからかうものではない!』
「今更なに照れてんだよ。へいへい。子作り旅行に応募ね。わーっかりましたー」
『こっ、子作りなどでは……』
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けっ!なんだって俺様があいつらの子作り旅行のお膳立てをしてやらなきゃならねぇんだよ。耳まで真っ赤になりやがって。
万が一、俺様の名前で出したヤツが当たったら、俺様が隊長を婚外旅行に攫って行ってやる。
でも、そんなことになったら、俺はあのヤローの手でバルト海に沈められて二度とフランスへ戻れねぇだろうなぁ。
おしまい
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