フリーエリア2


「オスカルの髪はさ、お日様の色だね。」
「お日様?」
「うん。キラキラでさー、遠くからでもすぐに分かるんだ。だからおれ、お屋敷で一番さきにお帰りを言ってあげられるよ。それに目はさ、空の青なんだ。すごいよ。おれのふるさとの空とおんなじ色なんだもん。」
掛け値なしの賛辞をわたしに贈ってくれたのは、ひょろひょろの長い棒の先に大きな手足がくっついているような黒い瞳の少年だった。  
「ならば、アンドレ。おまえの目は夜空の色だ。」
 わたしは夜の闇が怖かった。
ひときわ目を凝らすとかろうじて判別できる森と空の境界。
風が木々をざわざわと揺らす音は、
さながら闇へ引きずり込もうとしている魔王の囁きのようだった。
その囁きの向こうに満天の星空が広がっていることを教えてくれたのは彼だ。
ひょろひょろだった腕は隆々と逞しくなり、私をしっかりと抱き留めている。
するとかつての恐怖は安らぎへと形を変える。この男は何か魔法でも使えるのではないか?
 夜の支配者に抱(いだ)かれて、今夜も星空を飛ぶ。
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