フランス旅行回想録 【 Voyage 】

こちらは管理人のフランス旅行記です。
旅行前の準備のこもごもや、旅行中にフランスからUPしていた雑文、帰国してからの回想録などを置いています。

★2013/5 回想録
旅行準備から現地UP版までは、かつて【Hermitage】というおまけノベルを集めたブログにUPしていたものからの転載。
回想録からが、この「Voyage」でUPしはじめたものです。
(今はクレーム等により一部公開していません)

また、この旅行記には、追随するコンテンツとして【Webアルバム】がございます。
アルバムでは、管理人の訪れた各地の画像が2000px以上の大判サイズでご覧いただけます。
ベルサイユ宮殿や大小トリアノン宮などのお部屋が、壁紙の模様や扉のひび割れまで見える詳細さでUPされております。
スライドショーにすることも出来ますので、ご覧になれる方はどうぞ。
全部で1183枚の写真がご覧いただけます。

★2015/4 回想録
2015/6/12よりUPを始めました。
こちらもWebアルバムをUP中で、ただいまは3410枚の画像がご覧いただけます。
最終的には、およそ5500枚程度のアルバムになる予定です。

 

    ホテルを出てすぐ右にある通りを左へ向かえば、目線の先にはテュイルリー公園が見える。その隣には、目的地のルーブルが。
    それが最短距離でもっとも簡単な行き方だけれど、私はあえて手前のサントノレ通りで曲がった。
    世界でも屈指の高級店が軒を連ねるブランド街だということだけれど、ブランドものに知識も興味もない私は、ブーランジェリーや可愛らしくて色彩豊かなお菓子やさんなどをぶらぶらと眺めたり、サンロック教会を見学したり、そちらの方に心を惹かれていた。
    ピラミッド通りで右に折れて、ピラミッド広場の黄金のジャンヌ・ダルク像を眺め、観光初日に雨の中で観たパレ・ロワイヤル周辺を再びうろつきながらルーブルへ向かう。


    サンロック教会。サントノレ通り沿いにあって、ルーブルにも近い。無料の音楽コンサートなども開催しています。

    今回のルーブルの目的は、郵便局(またか)及び有名どころ。
    混雑必至のメジャーな作品と、そしてベルサイユのグロットやモン・サンの大潮と同じく、今回の旅行の目的としていた場所を観に行くつもりでいた。
    せっかくなので、メインゲートのガラスのピラミッドの入り口から入ってみた。




    入り口。右に延びているのが入場待ちの列。列のもっと後方は、テーマパークのアトラクション待ちのように、ポールとロープで区切らて九十九折り状態で並んでいる。
    この日の待ち時間は30分弱だった。


    ガラスのピラミッドの真下。手前に写っている椅子には普段スタッフがいて、両脇の通路を進むとエスカレーターがあり、シュリー翼に上がれる。


    ホール略図。このホールは8角形なので、中にいると円形っぽく感じる。通路が放射状に通っているせいかも。

    混んだホール。
    360度ぐるりと似た風景。
    広いし、とにかく常に人が右往左往しているので見通しが悪く、郵便局がどちらだったかつかみにくい。
    私は黒人系を思わせる肌の色合いの、スーツ姿の男性スタッフに声をかけた。
    「えくすきゅぜも?」
    そこだけフランス語もどきで言うと、その男性は喉もとに手をあて、キュキュッと襟を整える仕草をしてから、しっとりした笑顔で「ウィ、マドモアゼル」と答えた。
    漫画や小説での執事のイメージ。
    いかにもそんな感じで、私は内心「やーん、ちょっと素敵じゃないのやうー」などと腐った感に満ち満ちてテンションを上げていた。

    郵便局は略図の2にあたる。
    私はこの日、あらかじめ切手代ぶんの料金を小銭できっちり用意していた。
    海外旅行をしていると、妙に小銭が溜まりがち。なので、窓口でわちゃわちゃせずに小銭を消化するために、小さなジッパー付きのビニール袋に切手代分を別分けにして持って行っていた。郵便局なら個人の小売り店とは違って、小銭ばかりの支払いでも嫌がられないかと思って。
    ガラス張りの郵便局は空いていて、客は他に1人しかいない。
    「ぼんじゅー」
    挨拶しながら入っていき、あとは英語で日本にはがきを出したいのだと言ってみる。
    「ウィ、マドモアゼル。こちらへ来て」
    私は左側のカウンターへ呼ばれ、はがきを渡し、料金もカウンターへじゃらりと出した。
    窓口の男性スタッフは「ほう?」という表情をしてから、リズムを口ずさみつつ小銭を数え始める。日本語であれば、「にぃ、しぃ、ろぉ」みたいな感じだったのかもしれない。
    そして数え終わってから、「おお!すごい。完璧だね」と褒められた。
    …どこの小学生じゃい。
    この日に出したはがきは、凱旋門のショップで買った円形のもの。届いた方もいるでしょう?


    凱旋門を上空から撮った円形のはがき。12本の大通りが放射状に走ったこの様子が、地図上では「星=etoile」のように見えるので、エトワール凱旋門の名がついたとか。

    私の渡したはがきを奥のかごへと移した男性は、次に入ってきた老婦人に声をかけた。
    「ハイ、マドモアゼル。こちらへ」
    さすがフランス男。
    この男性には、女は全部“マドモアゼル”なのだ。


    彫像を観て歩く。


    全裸さんやら半裸さんやらチン子さんやら。


    そして、ミロのヴィーナスさん登場。


    の、尻

    さすがにヴィーナスのまわりにはすごい人で、ある程度人がすいて写真が撮りやすくなるまで、しばらく待たなければならなかった。
    世に数あるヴィーナス像の中で、もっとも有名なこのお方。
    初めて近くで観た感想は、「太っ」だった。
    グラマラスな体型だとは思っていたけれど、ウェストラインにはキレがないし、下腹の贅肉の乗った感じは豊満な色気があるといえばあるけれど、思った以上におばちゃんな貫禄がある。
    背中から観ると、背筋にもなかなかの脂肪が乗っていそうな。
    もっとも美の基準は時代と国柄によって変わるものだし、やっぱりミロのヴィーナスには目を惹かれた。
    太いと思った体型も、観ているうちに気にならなくなり、ひねりの効いたポージングや流れのある衣装、曲がった膝の角度など、観れば観るほど目が惹かれて、結局長いことそこでヴィーナスを眺めてしまった。

    この方にはどんな腕が相応しいのだろう。

    そして、私がヴィーナス像でもっとも時間をかけて鑑賞したのは、尻。
    正面から撮ったものは、画集でもDVDでもTVでもたくさんあるけれど、思う存分尻を観る機会はあまりなかったので。
    ミロのヴィーナス、【Bigsize Photo】の方では、肌の質感や凹凸・欠け、鼻の穴だのへその穴だの乳首の陰影まで写っております。


    ダリュの階段、踊り場。


    サモトラケのニケ、正面。
    ニケもヴィーナスと同じく腕がない。けれど右腕は発見されていて、ルーブルに保管されている。
    ニケの翼や腕について、詳しくは【こちら】


    ニケ、上手側から。


    そして下手側から。
    右腕は、大きく広げる形なのだとか。

    私が初めて「サモトラケのニケ」を知ったのは、13歳のとき。
    美術の教科書の裏表紙だった。
    それからずっと本物を観てみたくて、今回のフランス旅行では、彫像ならニケが1番の楽しみだった。いや、同じルーブル宮に住むダ・ヴィンチ作の超有名美女よりも、私はニケに会えることが楽しみで仕方なかった。
    まず、胴体が発見されたニケ。それから片翼が100片以上のかけらになって見つかった。
    そして今また、ニケはダリュの階段踊り場と共に、2013/9より2年間の修復に入っています。
    ニケの再展示は2014/夏の予定。
    ダリュの階段の修復は、さらに1年以上続くそうです。
    詳しくは【こちら】で。


    ルーブル美術館で、おそらくもっとも混んでいる「国家の間」。
    もう、いやんなるぐらい人がいて、すし詰め状態。


    望遠で撮ってみる。

    ルーブルの館内には、館内を案内する表示板はあちこちにある。
    でもやはり「モナリザ」は特別なようで、表示板とは別に写真入りの「モナリザ→」のようなポスターもあちこちで見た。

    私が訪れた日の「国家の間」もしっかり混んでいた。
    「モナリザ」の姿は、遠くにチラチラ見えるぐらい。
    ルーブルでは有名な絵画がたくさんあるけれど、どれもバーンと展示されていて、本当に間近で観られる。ケースに入っているわけでもなく、フラッシュを使わなければ写真を撮っても注意なんかされないし、申請すれば館内で模写もできる。(無料。模写の許可が下りた期間は入場料も無料)
    でもこの超・有名なジョコンド夫人はガラスケースに収められ、規制線の中にいらっしゃる。
    過去に盗難されたこともあったし、酸を浴びせられたり石を投げつけられたりで損壊したこともあり、今は防弾ガラスの中にお住まいだ。1974年、東京に貸し出し展示されたときでさえ、赤いスプレーを吹きかけられる被害にあっているし。(幸い絵は無事だったそう)
    防弾ガラスのケースの内部は、湿度・50%±10%、温度・18℃~21℃に保たれている。
    そして、この「国家の間」は「Salle de la Joconde(モナリザの間)」とも呼ばれ、展示室の改装資金を提供したのは日本テレビだそうだ。
    詳しくは【こちら】

    人垣の向こうに、銀枠の大きな防弾ガラスだけが見える。
    「モナリザ」の入った小さな額は、時おり見えたり見えなかったり。
    私もカメラを手にして、人垣の中に入っていった。
    押し合いへし合いの人。さすがに美術館だけあって、大声をあげたりする人はいない。
    でも空気は殺伐としていて、皆、“前へ”“中央へ”と無言の押しくらまんじゅう大会を展開している。
    私は中ほどで何枚か写真を撮った。
    人の肩の間から望遠モードで撮ってみたが、きれいに撮れない。


    頑張っても、この程度。

    でも何度か取り直してみたら、1枚だけそこそこきれいに撮ることが出来たので、私は「写りが小さいけどいいや」と諦めて、人垣から出ることにした。
    けれど。
    「モナリザ」に詰めかけてくる人に逆らって、押しくらまんじゅうから出るのは難しかった。
    私の左の膝には内側側副靭帯と外側側副靭帯がないから、横から力が加わると簡単に脱臼する。だから普段は人ごみには入らないし、混んでいるところは空くまで待つ。
    「モナリザ」につられて混んだ人なかに入ったことを浅はかだったと思いながら、私は人の空いている空間がないかキョロキョロと探した。でも、ルーブル1混み合う展示室が空くわけがなく、私は前進することも出来ず、下がることも横に抜けることも出来ずに、押しくらまんじゅうの真ん中へんでどうしたものかとキョロキョロするしかなかった。
    そんなとき、急に大きな声がした。
    女性の鋭い声。
    ざわざわと押し合っていた人たちが皆、緊張して止まる。
    こういうときは結構、「え!?私?私なにかした?」と思ってしまう人もいると思う。私もそういうタイプなのだけれど、でも往々にして自意識が過剰なのか神経質に過ぎるだけだ。
    だから私はこのときも、『え!?私?』とは思った。
    でも、まさかこんなに人も多い中で人波に埋もれた東洋人が目立つわけもなく、特に怪しい動きをしたわけでもないのに大声で注意される理由もない。なので、またキョロキョロしながら人の中から出ようとしたのだけど。
    再び女性の鋭い声があがった。
    どう考えても私に向けられた声のような気がして、防弾ガラスの左わきに立っている学芸員のマダムに目を向けると、何かを言われた。まったく理解出来なかったから、多分フランス語だったのだと思う。
    マダムは険しい表情をしているし、周囲の人は私を見るし、このときは本当に焦った。
    カメラのフラッシュは使ってないし、暴れたりも大声を出したりもしてない。液体も持ってないし。スリと間違えられたんだろうか。
    そんなことをわーっと考えていたら、マダムが規制線の前まで来て、張ってあるロープの一部を外した。
    そして私に“ここまで来い”という手振りをした。
    私にはそれがどういう意図か判らなかった。無意識に何かやらかしていて、それで怒られるのかなー、とか、そんなことを思ったりした。
    モタモタしていたら、マダムにまた大声で何か言われたので、びびりながら規制線の前まで出た。周りの人も避けてくれたので、細くあいた隙間を「ぱるどん」とつぶやきながら進んだ。
    人垣の最前列には、ガラスケースに入った「世界でもっとも知られた、もっとも見られた、もっとも書かれた、もっとも歌われた、もっともパロディ作品が作られた美術作品」のラ・ジョコンダがいる。
    私は「なんなんだよー なんもしてねぇだろうよ」という焦りでいっぱいだったんだけど。
    マダムはただ、私を規制線の内側に入れてくれただけだった。


    まん前で撮らせてもらった「Mona Lisa」。
    別角度や大きな写真は【Bigsize Photo】で。

    このときのことは、今考えても判らない。
    なんで、規制線の中に入れてもらえたのか。
    私を内側に入れてくれたあと、マダムはすぐにロープをかけ直した。
    私はマダムにお礼を、多分、言ったと思う。
    あんまりよく覚えていない。
    絵をじっくり観たい気持ちがありつつも、たくさんの人のまん前に呼ばれて、その絵をもっとも近くで見せてもらえて、嬉しかったんだけど、そこで堂々と観賞できるほどの肝っ玉は持ち合わせていなかった。
    マダムにやたらと頭を下げたことしか覚えていない。やたらと頭を下げて、あたふたしながら展示室を出た。
    ルーブルの館内から休憩しがてら更新した「現地UP版Voyage」へのコメントのお返事に、『ちょっとびっくりしてしまったこともあったので、それも後ほど画像を付けてUPしたいと思います。』と書いたのはこのことだったのだ。


    館内では、こんな様子も見ることができた。


    修復作業中。


    大変楽しみにしていた名画「ナポレオン1世の戴冠式」。
    うちにはこの絵の3000ピース超のジグソーパズルが飾ってあります。


    こちらも常に結構な人だかり。



    今回のフランス旅行では、おおざっぱに3つ、楽しみにしているポイントがあった。
    1つはベルサイユで、アモーやグロットを訪ねること。
    2つめはモン・サン・ミッシェルの大潮。
    そして3つめがルーブル美術館。
    そのルーブルで、モナリザよりももっとも観たかった場所。
    それがシュリー翼の半地下、「中世のルーブル」だった。
    たくさんの見学者でわさわさした館内において、そこにはほとんど人がいなかった。
    まずは城の模型が出迎えてくれる。


    これが12世紀のルーブル城の姿らしい。


    美術館の修復と拡張のための工事中に出てきた「ルーブル城要塞跡」。


    フィリップ2世(1165‐1223年)治世中の、ルーブル城要塞の堀と主塔の遺跡。


    発掘されたときの様子で展示されている。


    館内の混み具合が嘘のように閑散としている。
    私はかなり長い時間ここにいたけれど、すれ違った人は3人だけ。


    【Bigsize Photo】では、土の質感や石積みの凹凸やひび割れもご覧いただけます。


    下の方に動画もありますので、よろしければそちらも。

    掘り出された、ルーブル城の塹壕。
    街の中心を流れるセーヌ川が防御の弱点となっていたため、フィリップ2世はパリの防衛の要としてルーブル城を建てた。
    当時のルーブルは完全に要塞で、大部分が牢獄や人質の監禁場所として使われていたそう。私が初めてTVか何かでここを見たときには、牢獄跡も観ることができたのだけれど。

    そして、私が「現地UP版Voyage」で書いた、

    『なんだかな〜
    ちょっとアレは。
    いやいや、何か問題があったとか、期待はずれだったとか、そういうことではないのだけれど、でも、アレはねぇ。
    この「アレ」については、後ほど画像付きでUPします。
    なにがアレなのか…
    画で見たら、きっと共感してもらえると思うわ。』

    という部分。
    それが、ココ↓


    これは、ちょっとないと思うの。

    土くれと、古びて冷たい石積み。かつての監獄要塞。
    フィリップ2世と12世紀に思いを馳せて、しみじみ廻って出てみれば蛍光管のネオンサインって。
    いろんな国の言語でメッセージが書かれているのだけれど、日本語ですら意味判らん…
    中世への想像の翼も、ざっくりともぎ取られる破壊力を感じました(笑)


    「中世のルーブル」のちょこっと動画。
    長いVer,は【Blog&Photo】でご覧いただけます。


    さて、長く続いてきた【Voyage】も、ここで唐突に終わる。
    デジカメのメモリが本当に尽きたのだ。
    写真のUPのない私の旅行記になど、興味のある人はそれほどいないだろう。読み続けてくださった方のほとんどが、パリやフランスの風景をご覧になりたかったのだろうから。

    翌日私は帰国の途に着いた。
    フランス到着時には“拾われた女”だった私は、パリ→シャルル・ド・ゴール空港(CDG)の移動も、どうするかぎりぎりまで決めていなかった。
    凱旋門近くから出ているエール・フランス・バスにしようか、オペラ・ガルニエ近くから出ているロワシーバスにしようか迷ったが、「Hotel des Tuileriesに泊まっているのなら、ロワシーの方が断然近いじゃないの」「本数が多く出ているからロワシーの方が待たない」と現地在住の日本人に勧められたので、そうすることにした。
    乗り場はオペラ座の内部見学に行ったときに一応確認しておいたので、迷うこともなく着いた。
    停留所にはすでにバスが止まっていて、スーツケースを積み込んでいる人もいた。
    私はバスの前面へまわって行き先を確かめ、ドライバーにも確認する。ロワシーはCDGとガルニエ宮しか行き来していないはずだけれど、帰国直前にバスの乗り違えでわけの判らんどこかへ行ってしまったらしゃれにならない。
    「このバス、ド・ゴール空港行きですよね?」
    ドライバーが頷いたので、私はガチャガチャと音をたてながら、何段かあるバスのステップにスーツケースを引き込んだ。
    バス代金用に別にしておいた10ユーロを支払い、車内の細い通路をスーツケースを押しながら進む。まずはバスの中央付近にある荷物置き場に、スーツケースを置かなければならないのだが。
    荷物置き場は3段の棚になっていた。
    1番置きやすいのが中段で、ちょっと持ち上げれば立てた状態で積み込める。でもすでにそこはいっぱいだった。
    となれば、上段か下段しか置き場はないのだけれど、上段は結構な高さまでスーツケースを持ち上げなければならず、逆に下段は本当に低くて、スーツケースを寝かせて押し込まないと入らない。
    うーん。
    スーツケースの重さは20Kg。
    棚の上段まで持ち上げるのは、腰痛女には無理だ。
    私はスーツケースを寝かせて、下段に蹴りこんでやろうと思った。スーツケースに傷はつくだろうが、中の物に傷がつかない為のハードキャリーなのだ。傷がついて当たり前のものだと考えている。
    よーし、とやる気じゅうぶの私。
    でも私がそんなことをしなくても、車内にいた男性の乗客がすぐに3人ほど腰を上げ、「やってあげるよ」と言ってくれた。そして、私がお願いするとかしないとか決めるまでもなく、1番近くにいた体格の良い欧風な顔立ちのおじさんが上の棚に運びあげてくれた。
    その男性は奥さま連れで、私はお礼にお饅頭と絵はがきを差し上げた。そのあとは、お礼方々少し雑談をして。
    どうやら男性はフランス人で、奥さまは中国人みたいだった。商用での旅で、パリへはトランスファーで寄ったらしい。
    ロワシーはCDGへ向かうバスだけれど、エール・フランス・バスと違って路線バスでもあるから、乗客は旅行者ばかりではないし、ところどころで停まる。車内放送はフランス語メインで英語もあって、たまに日本語も流れた。
    30分も乗っていると「アエロポールなんちゃらかんちゃら……シャルル・ド・ゴール ドゥなんちゃら…」と、空港の案内らしき放送があった。
    空港が近いということか。
    私が書きかけのノベルの保存をしながら電子手帳を閉じていると、フランス人のご主人が聞いてきた。
    「ターミナルはどこなの?」
    「CDG2」
    「私たちと同じだ。その、どこかな?」
    CDGは1~3まである。
    私が乗る予定のエール・フランスのターミナルは2で、私はこれを成田の第1ターミナルと第2ターミナルのような感覚でいたのだけれど。
    正確に言えば私の乗る飛行機は、2Eから出る。だから、CDG2ターミナル内のEというサテライトに行けばいいのだと思っていた。
    でも。
    空港付近まで行ってみたら、2Aから2Gまでがそれぞれ大きなターミナルになっていて、循環バスで移動するほど遠いことに気づいた。サテライトなんて言っていられるものではなかったのだ。
    成田はそれほど大きな空港ではないと判ってはいるのだが、どうも感覚が成田基準になってしまう。
    私に言わせれば、CDG2の2A・2B・2C…じゃなくて、CDG2・CDG4・CDG5…と称して欲しいぐらいだった。これでまだまだ拡張工事中だというのだから、どれほど大きな空港になるのだろう。
    バスはCDG1とCDG2に停まるのではなく、CDG1と2A・2B・2C・2D・2E・2F・2Gに停車するのだ。
    「ああ!2E。判った。2Eってそういうこと」
    私がそういうと、ご主人は「そうだよ」と笑った。
    そしてご夫妻の降りるのも2Eだというので、バスが2Eに着くと、ご主人は、ご夫妻自身の荷物より先に私のスーツケースを棚から下ろし、バスの外まで運んでくれた。
    そこまでしてもらうのは心苦しく、何度もお断りしたのだけれど、奥さまは「いいのよ、好きでやっているんだから。やらせておけばいいわ」と笑っていた。


    CDG1は放射状にのびたサテライトがあるのだけれど、CDG2は2A…の各ターミナルビルが集中して建っている感じ。地図だと小さく感じるかもしれないけれど、1つのビルがじゅうぶんでかい。

    2Eの入り口までの短い距離を一緒に歩き、ご夫妻と別れるときにご主人が言った。
    「Bon Voyage!」
    そのときに私は、この旅行記のタイトルを「Voyage」にしようと決めたのだった。

    その後、チェックインカウンターで荷物を預けてようやく身軽になったあとも、“ボンジアなブラゼレーラ”とか“チャイニーズvsラデュレガール”とか“タイムおばさん”など、印象深い出来事は続いた。でも写真もないし、読みたい人がいるかはかなり疑わしいのでやめておく。
    興味のある方は【Blog&Photo】の方でコメントしてください。

    それから、「お土産は何を買ったの?」というご質問が多かったので、一部をUPしてみます。


    ハードロックカフェ・パリのシメールのTシャツ。(ご当地ハードロックを集めているので)
    3個でいくら、といったキーホルダー。ノートルダム寺院近くのお土産屋さんで、劇団の友達用にたくさん。
    マイユのフルーツフレーバーマスタード。
    オペラ座のブティックで、文具とキーホルダー。ミュー友向けに、2個セットで何組か。


    モン・サン・ミッシェルのサン=ピエール教会のキャンドル。友達や当サイトにお見えのお客さまへ。
    修道院のショップで買った、ミニボトル。海砂と貝がらとメッセージが入っていて、大きさは5cmぐらい。自分用(ガラス細工やガラスの雑貨を集めているので)
    モン・サンのスーベニアコイン。友達とサイトにお見えのお客さまに。
    モン・サンのガレット、蜂蜜、ミルクジャム、キャラメルジャム、塩キャラメル、塩キャラメルバー。自宅用やら友達用やらサイトのお客さま用やらご近所向けやらで、かなりの数を買いましたわ。ホテル メールプーラールのショップで買ったけれど、最終的にはこのお菓子類がもっとも嵩張りました。


    ルーブルで。しおりは劇団の子たちに。
    銀色の懐中時計は自分の趣味。(懐中時計を集めているので)
    マグネット。旅行に行くと、記念にご当地マグネットを買ってくるのが常なので。UPしていないけれど、ベルサイユでも買いました。
    ルーブルのスーベニアショップは略図の3がメイン。8は書店だけれど、本だけじゃなくてお土産っぽいものも置いている。
    6か7のあたりに子供向けショップもあるし、ショッピングモールのカルーゼル デュ ルーブル に地下で隣接しているので、買い物には困らない。
    【CARROUSEL DU LOUVRE 】


    エッフェル塔のボトルに入ったものは、バスバブル。ボディソープとしても。友達やサイトのお客さま、フィギュアスケートのブログのお客さまへ。
    3色旗のタグがついたものは塩キャラメル。パッケージが可愛かったもので。やはり友達やサイトのお客さまへ。
    王妃さまの肖像画が印象的な数々は、プチ・トリアノンのショップで。ベルサイユの果樹園で採れたりんごのキャンディ、果樹園のジャム類、マリーのスーベニアコイン、缶バッジ。友達とサイトのお客さまへ。


    ピューターのジュエリーボックス。これも自分の趣味で。
    ロイヤルサロンのフォトフレームは猫友へ。
    あと、今、思い出したのですが、モン・サンでアンティークのビーズやメダイ、ロザリオを買いました。私はビーズのアクセサリーや小物を作って販売しているので、ビーズとメダイはその材料として。

    それから。
    お土産にマカロンを買って帰りたい人は多いと思うのだけれど。
    機内預けの荷物に入れると、割れてしまいそうで心配。だから帰国日に買って、手荷物で持って帰ろうと考える方は多いみたいです。
    でも、マカロンは手荷物として機内持ち込みはできません。
    マカロンの中のクリームやらなんやらが液体とみなされて、持ちこみ不可です。
    こういう決め事は変わるから、今もそうなのかはちょっと判らないけれど、私が行ったときにはそうでした。
    「空港ビルで売ってるマカロンなら大丈夫なんじゃない?」と思う方もいらっしゃるかもしれないけれど、これも駄目。手荷物検査で引っかかってしまいます。
    なので、マカロンを手荷物で持って帰りたい場合は、手荷物検査後にお求めになると確実です。手荷物検査を終えたあと、免税店にスウィーツの専門店は多分ないのですが、2Eではこんな感じで売っています。


    ↑これはCDG2Eのラデュレではないけれど、ほぼ同じです。

    私は2Eで買ったけれど、2Fでも買えるみたいです。CDG1にはないようです。
    何個入りのBOXかを決めて、好きなフレーバーを選んで買うことも出来るし、詰め合わせもあります。
    それから、免税店の中に小さなワゴン売りでダロワイヨのマカロンがあります。
    こちらは詰め合わせはなかったような。
    どちらにせよ、私が行ってから1年近く経ちますので、今はどうなっているのか判りません。マカロンの機内持ち込みがO.K.になっているかもしれないし。

    それから、こちらは参考にした本。


    ふくろうの図説シリーズ。ヨーロッパの歴史関係はほとんどうちにある…


    *『iPadでヨーロッパひとり旅を10倍愉しんだ私の方法』(中島美佐穂/著、明日香出版社)
    *『ベルサイユのばらの街歩き』(「ベルサイユのばら」を歩く会/著  池田理代子プロダクション/著)
    *『ヴェルサイユ宮殿に暮らす 優雅で悲惨な宮廷生活』(ウィリアム・リッチー・ニュートン/著 北浦春香訳 白水社)


    *『アラン・デュカスが贈るフランス極上ホテル「シャトー&ホテル・ド・フランス」最新ガイド』←これはもう売っていないような…
    *『王妃マリー・アントワネット「美の肖像」』(家庭画報特別編集 南川三治郎 世界文化社)


    『歩くパリ』と『るるぶ パリ』は毎号買ってます。

    そして、私が今回お世話になった旅行代理店はこちら。
    AIR TRAVEL 空の旅
    一応書き添えておくと、この代理店に“手塚”というスタッフは多分いない。
    “手塚”は、私についてくれた男性担当者さまに親しみと感謝を込めて付けた愛称だ。だから問い合わせをして「手塚さんを」などと言っても通じはしない。
    こちらの代理店さまに興味をお持ちになって、旅の問い合わせをしてみようという方はお気をつけください。

    【Voyage】を読んで、「この程度の旅行で満足しているなんて薄っぺらいヤツ」と思った人もいるでしょうし、「語学が出来なくてもなんとかなるもんなのね。私も行ってみようかな」と思う方もいらっしゃるかと思います。
    私自身「腰を傷めなければもっとたくさんまわれたのに」とか「病気持ちじゃなければもっと動けたのに」とか、後悔がなくはありません。予定通りにまわりきれなくて、使い残した入場券やカルネもあるし。
    【Voyage】は世界中を旅するたくさんの旅行者の中の、たった1人の体験記でしかありません。“あなたの旅のご参考に”というものではなく、ベルに魅了されて二次創作にまで手を出した少々痛々しい女の目には、フランスがどう映ったか。それをただ書き綴っただけの回想録です。
    広く暖かい気持ちでおつきあいくださった方がいたなら、とても嬉しく思います。
    読み続けてくださった方に感謝を。
    手塚と、それからたくさんのアドバイスを送ってくださったUS在住のま〇〇〇さま、UKのぽ〇〇さま、中欧のれ〇〇〇〇〇〇さま、直近でフランスに行っていた海〇〇さま。ありがとうございました。
    そして現地UP版【Voyage】で、ご心配や励ましや冷やかし(笑)のメッセージを寄せてくださった方も、ほんとにありがとうございます。みんなにお土産をお送りしたかったけれど、ご住所をお尋ねするのも失礼かと思って、聞けずじまいの方がほとんどでした。

    約12時間のフライトを終えて、成田に着いた私。
    最初にしたことは、地元までの高速バスのチケット購入とレンタルしたwi-fiの返却だった。
    バスは、今すぐならちょうどいい時間がある。でもwi-fiの返却をしていたら間に合わない。すんごい走れる人なら、なんとかなるかもしれないけれど。
    私は1本見送ることにして、時間の出来たぶんたらたらと出発ロビーまで行き、レンタルカウンターで返却の手続きをした。
    それからそのカウンターの向かい側の売店で、缶コーヒーを買った。
    それを持って、私は借り出したカウンターの、隣のレンタルwi-fiのカウンターへ行った。
    出発時の借り出しのとき、隣のカウンターの客である私にwi-fiの使い方を丁寧に教えてくれたおじさんは、その日もカウンターにおさまっていた。
    近寄っていく私に、おじさんは手元から目線を上げる。
    もちろん私の顔なんか覚えているわけがない。1日に何十人、何百人もの人がカウンターを行き過ぎるのだもの。
    でも、私がカウンターに缶コーヒーを置いたら、おじさんは「ああ!」とニコニコした。
    「ご帰国ですか」
    「はい。さっき着いたばかりで、wi-fiの返却に」
    「おかえりなさい」

    フランスから戻った私に、1番最初に「おかえり」と言ってくれたのは、友達でもつきあっている男でもなく、レンタルwi-fiの親切なおじさんだった。


    【Voyage / FIN】
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