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こちらはメインコンテンツの【令嬢の回顧録】です。
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「100年の恋獄」には異なる2つのENDがあります。




【100年の恋獄・下 Ver.1-Bitter end】 



「…む…ぅ…」
「ヴィクトールさま!」
ひどい頭痛を覚えながら目を覚ますと、従僕が私をのぞきこんでいた。
ここは… あの宿屋?
そして!
私は勢いよく飛び起きた。
「今は何時だ?あれから何時間経った?グランディエは!?」
つかみかからんばかりの私の剣幕に従僕はたじろぎ、しかしいつもの調子で要領よく、私にことの次第を説明しはじめた。
私は、倒れているところを発見されたらしい。
前の晩に飛び出したきり戻らない私を、従僕は一晩中探した。そしてようやく早朝の橋の上で、正体なく臥した私を見つけたのだそうだ。
また、それと時を同じくしてマッサビエルの森で火の手があがった。
不審に思った従僕は私を宿屋に担ぎ込んだあと、急ぎ其方へも向かったという。けれどそこに従僕が見たものは、既にものすごい炎に包まれた小さな山荘だった。
轟々と音をたて、暴れる紅蓮。
誰もが何ひとつ出来ぬうちに、恐ろしいほどの勢いで燃え落ちたのだそうだ。
「それは地獄からの炎かと思われるほど高く吹き上がり、けれど山荘跡には、煤けた塵が残るのみでした」
「塵のみ、だったと」
「はい、ヴィクトールさま。焼失した山荘の跡地には土や下草の焦げた痕跡すらなく、本当にただ一握の塵しか遺らなかったのです」

私は発見からの3日3晩眠り続け、ようやく目を覚ましたときにはすべてが終わっていた。
あの山荘で見たものも、グランディエの言葉も、今となってはもう何も判らない。
宿屋の女や街の人々に聞いてもみたが、あの山荘を買い取りひっそりと住みついていた男の素性を、誰も定かには知らなかった。
あのさやかな月の夜は、あの方を強く想い続けた私が作り出した願望だったのかもしれない。
或いはマッサビエルの森の持つ、濃い緑の匂いが見せた幻…?


私は結局、予定していた次の街を訪れることなく、この旅の帰路についた。
デイ・ベッドに埋もれて眠っておられたあの方のお姿と、今も指先に残る冷たさを、幾度も、幾度も確かめながら。


マッサビエルにはあれ以降、しばらく人の訪れが絶えてなかったらしい。
そして次にあの緑濃い森と泉の洞窟が人の噂にのぼるのは、1858年2月のこと。
14歳の少女・ベルナデットが声を聞き、その姿を見たという。ベルナデットもまた、その微かな姿を“アケロ”と呼んだ。
マッサビエルの洞窟奥に秘された泉はやがて口伝えされ、聖母降臨の奇跡を求める人々の巡礼の地となる。

ルルドの泉。

しかしそれは、私などが窺い知れぬ、次の世の物語だ。


Bitter end FIN
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