フリーエリア2


なんだかすごく落ち着かない。胸騒ぎがする。そしてひどい喪失感。何かを失いそうで…。
………………………………………目の前に真っ青な海が広がっている。私は焦って周りを見渡している。私の隣にいるべき人がいないのだ。『アンドレ…?』呼んでみる。でも返事がない。海の浅瀬にアンドレが立っている。
『アンドレ…!』もう一度呼んでみる。また返事がない。アンドレは海の方へゆっくり歩いていってしまった。私もあわててアンドレを追いかける。その広い背中に抱きつこうとしたら,スッとすり抜けてしまう。
『アンドレ!!アンドレ…!待って…!待って…!』
そのまま彼は海へ入っていってしまった。
………………………………………「オスカル様!!大変です!!アンドレ先輩が何者かに階段から突き落とされたそうよ!!今,意識不明で病院に運ばれたそうです。」
取り巻きのミカエラが顔面蒼白になりながら教室に駆け込んできた。
アンドレが…意識不明…!そんな…!そんな馬鹿な…!
気がついたら私はアンドレのいる病院へ向かっていた。
…桜川総合病院…
「ばあや!!アンドレ…アンドレは無事なのか!?ばあや!!」
病室へ入るなりばあやにアンドレの容態を聞く。
「お嬢様!!…アンドレの意識はまだ戻っていません…。頭の打ち所が悪かったようです。さ…お嬢様お掛けになってくださいな。」
ばあやがオスカルを椅子に座らせたとき,藤稔薫が入ってきた。
「アンドレ様!!大丈夫ですの!!いま薫がきました。…まだ意識が戻っていませんのね。おばあ様でらっしゃいますね?はじめまして。同級生の藤稔薫です。」
急にやって来た薫に少し驚いたばあやだが,薫にも椅子を勧める。その時,アンドレの意識が戻った。しかし…。
「アンドレ!!気がついたか!?良かった…!」オスカルがそう言ってアンドレの手を握る。でも,アンドレはその手を振り払った。アンドレの目付きがいつもと違う。ガラス玉のような意思のない瞳。
「君は…誰なんだ…?悪いが君のこと,思いだせないんだ。」
「アンドレ…!お前…記憶が…。オスカルお嬢様は,お前の婚約者なんだよ。忘れてしまったの!?」オスカルは,ひどいショックを受けて声が出ない。
「おばあちゃん,この金髪の女性も黒髪の女性のことも何も覚えてないんだ。そしてこの金髪の女性といつ婚約したの?……ダメだ。考えたら頭痛がしてきた。少し眠りたい。」
「アンドレが…私の事を覚えてない…婚約したことも私の名前も……!そんな馬鹿な…!」
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